「MIGHTY SILENCE」 Images of Destruction: The Great Earthquake and Tsunami of East Japan Yasushi Handa(写真)<1>
「MIGHTY SILENCE」 Images of Destruction: The Great Earthquake and Tsunami of East Japan <1>
Yasushi Handa(写真) 2013/03 イタリアSkira社 (英語)ハードカバー: 262ページNo.3598★★★★☆
わたしの目の前にあるのは半田也寸志の圧倒的な写真集「マイティ・サイレンス」(イタリア・スキラ社、2013/03刊)である。
フクシマのまわりにひろがる平原を、嵐のあと亡霊のような静けさが支配し、自然が引き起こした悲劇が、生きることの意味を問うている。「ネグリ、日本と向き合う」(2014/03 NHK出版)p163
ネグリがこの写真集を見ていたのは時系列で考えると、来日公演から帰国して半年後の2013/09/13ということになる。半田也寸志の写真集「20 DAYS AFTER」は2012/03/30に出版されているが、それが大幅に増加され、その後の「FUKUSHIMA:18 MONTHS AFTER」のおよそ20枚弱の写真が加えられて、こちらの「MIGHTY SILENCE」が出版されている。
率直に言えば、被災地の人間としては、「見慣れた」、「よくある風景」である。特段にこの写真集だけに写しだされたというものは、ほとんどないのではないだろうか。ただ、この写真集が特異なのは、超細密な画素数のカメラを使い、ある種の「演出」さえ感じるような、どんよりした雲と、微細な「ガレキ」たちの対比が、見る者の度肝を抜く。
半田也寸志という写真家は1955年生まれだから、私よりちょっと若い世代である。ほぼ同年代だ。どうやらコマーシャル写真やファッション写真などで活躍してきた人なのか、スポンサーらしきページに化粧品メーカーのロゴもある。日伊協会というところも協力しているようである。写真集とは言え、解説ページも多く、山折哲雄などの名前も見える。
日本の地図で被災地やフクシマの位置関係を紹介しながら、今回のこの有史以来の希有な災害を提示している。ネグリはフクシマのまわりにひろがる平原を、嵐のあと亡霊のような静けさが支配し、自然が引き起こした悲劇が、生きることの意味を問うている。「ネグリ、日本と向き合う」(2014/03 NHK出版)p163と語っている。しかし私の見る限り、この本における原発そのものの風景は一枚だけである。
ネグリとて、震災から2年半経過するまで、他のメディアで福島原発の写真を見たことがなかったわけではないだろうが、明示的に示されたのはこの写真集であるし、おそらく、この写真と、それに続く平原や被災した街並みの写真だった、ということになる。
そもそもこの写真家自身は津波そのものの脅威を撮影したかったのだろうし、それ以上のことを要求する気はない。私は被災地に入っても、一枚も写真が撮れなかったドシロートである。このような、明確なカメラマンマインドを持ったアーティストたちにこそ与えられた仕事であるのだ、と理解する。そして何はともあれ、この写真集を見ながら、ネグリは「原子力国家」のゆくえを危惧する。
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