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2015/11/03

「叛逆」―マルチチュードの民主主義宣言 アントニオ・ネグリ他<2>

<1>からつづく 


叛逆」―マルチチュードの民主主義宣言<2>
アントニオ・ネグリ , マイケル・ハート (著), 水嶋 一憲 , 清水 知子 (翻訳) 2013/03 NHK出版 単行本 216ページ
★★★★★

 約2年前にこの本を読んだ時に比べると、だいぶイメージが変わった。最近になって、「ネグリ、日本と向き合う」と出会い、かなり読みこんだ上に、関連の資料等をさらに加味したからである。分かりやすくなったとも云えるし、こちらの理解の幅が広がったとも言える。

 この本においては、2011年に起こった、いわゆる「アラブの春」を筆頭とする、各国、各地域での市民レベルの抗議行動が、ある種の連帯模様を描き、それを見たネグリたちは、新たなるマルチチュードたちの「叛逆」が始まった、と見たのである。

 日本の北部にすむ私にとっては、2011年は3・11が起こった年であり、それ以上でも、それ以下でもない。それを外して2011年を考えることはできないのだが、この本において、特にネグリの考察においては、ほとんどがいわゆる3・11のことが描写されていないので、そこが大変不満だったのである。

 しかしながら、3・11直後におけるネグリのコメントは別な形で伝わってきていたし、また今回「ネグリ、日本に向き合う」を読むことによって、前回の私のコメントはかなり偏った見かただった、と修正を迫られた、というべきである。

 将来的に、地球史的に見れば、2011年は、3・11、アラブの春、スティーブ・ジョブズの死、という年代であったと語られてることになるだろう。

 ネグリたちは、この本において、「借金を負わされた者」、「メディアに繋ぎとめられた者」、「セキュリティに縛りつけられた者」、「代表された者」という、現代の虐げられた人々のパターンを提示する。思えば、この4つ共に、私なんぞもまんまとハマっているわけで、もちろん、それに対する抵抗力もつけてはいるわけだが、そのように切り取ったネグリたちの手法にもなるほど、とうなづける面が多い。

 それに対する「マルチチュード」としての反撃、叛逆は、「借金をひっくり返せ」、「真理を作り出せ」、「逃走し、自由になれ」、「自らを構成せよ」という、彼ら流の「解」を提示する。おやおやと思う部分と、わが意を得たりと思う部分と半分半分だが、そのような檄を飛ばすネグリたちは、この本においては、立派なアジテーター達である。

 <帝国>、マルチチュード、に並ぶ三要素としてコモン<共>があったことは、以前より分かっていたはずなのだが、ここに来て改めて、そうそうそうだったのだ、と気付いた。そこで「コモンウェルス」を読みなおし、コモンをコミューン側から読み崩し中なのだが、どうも意見はすれ違う。

 「コモンウェルネス」の中のコモン(といっても上下巻の4分の1しかまだ再読していない段階だが)にはどうも何処までも違和感が残る。こちらの思うようなコモンにならない。そんなまどろっこしさを抱えて、こちらの「叛逆」を読んだところ、時間軸もかなり近寄ってきたせいもあるだろうが、かなり分かり易くなってきた。

 とくに後半などは、かなりな「叛逆マニュアル」とでもいうような、手取り足とりの「指導書」となっている。前回この本を読んだ時、私は、前半を読んで、もう飽きてしまっていたようだ。今回は特に、この後半部分が新鮮だった。

 そもそも今回、戦争法案に反対する国会前デモの人々を「理解」するには、マルチチュードという概念なしでは、私なんぞは共感を持てないでいたのだが、その感覚が正しいのかどうか、それを確かめるために、ネグリ再読となったのだった。

 この「叛逆」を読むにおいて、私の見方が多数派か少数派かはともかくとして、間違った見方ではない、と理解したことである。この見方で正しいのである。であるからこそ、今回の国会前デモも、大きな枠組みの中で、重要な要素を構成しているのだ、と痛感した。

 今日はちょっと細かくは書かないでおくが、ネグリは、そうとう近くにいる、と、直感した今回の読書だった。

<3>につづく

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