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2015/11/24

「『秀真伝(ホツマツタヱ)』が明かす超古代の秘密」 記紀では解けない日本神話の真相 鳥居 礼

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「『秀真伝(ホツマツタヱ)』が明かす超古代の秘密」 記紀では解けない日本神話の真相 
鳥居 礼(著) 1993/08 日本文芸社 単行本 230ページ
No.3617★★☆☆☆

 この本もまた、我が家の天井階から発掘された一冊(笑)。発行が1993年だから、同年以降に私が購入して目を通したものだろうが、「捨てるに捨てられない一冊」として天井階行きになっていたものだろう。

 私自身は1991年の環境心理学シンポジウム「スピリット・オブ・プレイス」のスタッフをやったおり、さまざまな史料集めに奔走したために、ホツマとも出会ったが、確たるイメージを持つことはできなかった。この本は93年発行だが、シンポジウムが終わっても、関心があったものと思われる。しかしながら、その後の一連の偽造や偽証問題が発覚し、さっさと距離を置いたものと思われる。

 たまたま見つけたので、掴んで降りてきたが、3・11以降に他のホツマ関連の何冊かを「発掘」した時には視野に入らなかったものと思われる。今読んでも、興味深い点はあるのだが、決定的には、「東日流外三郡誌」や馬場壇A遺跡の石器などが論証の一部に活用されているために、全体の構図が怪しい一冊になってしまった。

 「超古代の聖地『常世の国』は日高見=東北だった」p58、「『秀真伝』の記述は霊性の高い地域、日高見(東北)が中心」p68、「東北生まれのニニキネノ尊は国土整備のため諸国を巡守した」p184、「道奥(ミチノク)の軍勢も降伏した!ヤマトタケノ尊の東征の真相」p222など、関心がないわけじゃぁないが、当ブログの進行としての論拠にするには、いかにも弱い。

 一テーマが見開きの2頁に収まるように記述されていて、私のような初心者にはとても読みやすいのだが、それだけに逆に多くのテーマが含まれることになり、雑然としたイメージは免れない。また、もともとの記紀についてのそれなりの素養がないと、その真偽さえ共感することができない。

 当ブログとしては「言霊―ホツマ」THE WORD SPIRIT(1998/05 たま出版)、「神代の風儀」 「ホツマツタヱ」の伝承を解く(2003/02 新泉社)、などにも目を通しているが、読後感としては、いずれも共感度が低い。

 「秀真伝」に明確な記述があるように、超古代の日高見(東北地方)は、日本における最重要祭祀拠点だったにも関わらず、「古事記」「日本書記」には、それに類する記述がまったく見られない。「ヒタカミ」とは、秀真国(東海・関東)から見て、東方はるかかなたに、高波が寄せるその上に、日を高く見るという意味である。現在地名として残っている「北上」は、「ヒタカミ」から転じたものであろう。p68「『秀真伝』の記述は霊性の高い地域、日高見(東北)が中心」p68

 エスノセントリズムから考えれば、このような贔屓(ひいき)の贔屓倒しは、有難くもあるが、面倒でもある。より信ぴょう性のある「事実」を積み上げていかないと、全体像が基礎から崩れることはよくあることである。

 最新の研究としては『よみがえる日本語』ことばのみなもと「ヲシテ」(青木純雄他 池田満・監修 2009/05 明治書院)などにも目を通してみるのだが、もともとの当ブログの主旨にいまいちフィットしないところが難ありである。

 そもそも3・11後に飯沼勇義史観に出会って、千葉富三ホツマを読み解こうとしているのだが、どうもいまいちエンジンがかからない。その原因は、論あって証が少ない点である。飯沼史観においても万が一3・11が起こらなかったら、私のような節穴のような目には、ちっともひっかからなかったであろう。

 ホツマが、当ブログにおいて、もっと身近に感じられるようになるには、仙台郡山遺跡のような、より学術的で公的な「証」が、さらに明らかになる時代を待つしかないのかも知れない。

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