「続・風の帰る場所」 宮崎駿
「続・風の帰る場所」映画監督・宮崎駿はいかに始まり、いかに幕を引いたのか
宮崎駿、渋谷陽一、他 2013/11 ロッキングオン 単行本: 324ページ
No.3604★★★★☆
2008年から2013年まで雑誌「CUT」に掲載された宮崎駿のインタビューをまとめたもの。インタビュアーは渋谷陽一。今回は、アントニオ・ネグリの「ネグリ、日本に向き合う」に宮崎駿の「風立ちぬ」がでてきたことを契機に「風立ちぬ」追っかけを始めた当ブログなので、他の部分は割愛した。ただ、3・11当時の宮崎の感想も興味深かった。
例によって、ある種、のらりくらりの宮崎駿節が展開されるが、渋谷陽一も、自らの観察眼から鋭いジャブを繰りだす。どこが本音やら問題点やら、一転二転するが、そもそも作品があるかぎり、解説などは二の次で、とにかく作品と向き合い、そこで見る者が何を感じたかが優先するだろう。
3・11における宮崎の反応も興味深い。決して彼も特異な感性の持ち主ではなく、むしろ3・11に立ち向かう時、ネグリも宮崎も、同じ地平にたたされていることを確認する。そしてなお、宮崎の反戦意識や、脱原発意識、あるいはエコロジーに対する姿勢など、基本は、私たちと何も変わらないことを確認することができた。
大津波は、原因ではない。それは自然の行為で、むしろ僕が言いたいのは人間のほうで、地震はこれまで何回もあったことがまた起こったんです。たくさんの悲劇がありましたが、震災を受けた人たちは、乗り越えていけると思います。ですが原発の問題はね、これはエネルギーを過剰消費していく文明のありように、はっきり警告が発せられたんだと思うんです。p138 宮崎談「大量消費の終わり」
同じことが東京で起きたらどうなるかって考えます・・・・。必ず起きますよ。僕は逃げませんけど。だって目撃者になろうと思っているんだから。p114宮崎談「東京で同じことが必ず起きる」
21世紀になる時から、これからドロドロの世紀が始まるんだと思ってましたから。それは政治的な混乱や軍事的混乱や、経済的な破綻やね、そういうことの中でとにかく生きていかなきゃいけないような時代になるっていうふうに思ってました。とはいっても、それらが現実化する度にね、驚いているだけで。p144宮崎談「原発が弾ける前から空気の様子が変わっていた」
時代にね、追いつかれたんです。だから、そのあとに津波が来たでしょ。津波が来たらヤバいな、来るだろうとは思ってましたけど、どういう形で来るかは予想してなかった。それで、今度の映画の絵コンテを切っている最中に、震災のシーンを切り終えて、次のシーンに移った頃に、本当に地震が来たんですよね。これはね、とうとう追いつかれて、追い抜かれたなと思った。p198宮崎談「時代に追いつかれた『ポニョ』」
あの放射能漏れは止まらないしね。それでも原発を再開したい連中は、なんかかんか言いながら再開したがるだろう。所詮、何も見えていないから。p221「まさに腐海が生まれつつある」
解説本は数あれど、この本は、宮崎本人の言葉が書きとめられているから、その点、貴重である。
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