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2015/11/19

「ネットで進化する人類」 ビフォア/アフター・インターネット 角川インターネット講座15 伊藤 穰一 (監修)<2>

<1>からつづく

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「ネットで進化する人類」 ビフォア/アフター・インターネット角川インターネット講座15 <2> 
伊藤 穰一 (監修) 2015/10 KADOKAWA / 角川学芸出版 単行本213 ページ、 Kindle版 ファイルサイズ: 4328 KB 
★★★★☆
 


 監修者の伊藤穰一以外の5人の論文にも目を通してみた。

「テクノロジーの前あし、アートの触覚」 スプツニ子! 027p

 1985年生まれというから、うちの愚息と同じ30歳、の女性。1998年、13歳の誕生日にiMacを家族がプレゼントしてくれたという。我が家でも半年遅れになるが、その上の女の子が高校受験に合格してiMacをプレゼントした。時代背景は分かる。まだデジタル・ネイティブとまでは言えないが、私とは世代が一つ違う。現在MITメディアラボ助教。

 バイオテクノロジーというと最先端科学のイメージを持ちやすいのだけれど、日本人が大好きな納豆、しょう油、味噌、日本酒、麹(こうじ)といった発酵食品は、日本独特のDIYバイオである。アマチュアでもバイオを研究するDIYバイオの新しさと、日本の土着の文化が接続するような空間をつくってみたいと思っているし、そこで、「あっ、これはおばあちゃんがやっていたこと。おばあちゃんはDIYバイオサイエンティストだったんだ」という気づきがあったりしたら、楽しい。p049スプツニ子!「アートで議論する未来の自然」

 伊藤穰一の文章にもあったけど、キッチンで行なうバイオテクノロジーの実験など、たしかにDIYバイオは楽しそう。しかし、納豆づくりも、ドブロクづくりも、ムズカしいぞ・・・。日本に限らず、ワイン作りや、チーズ作り、キムチ作り、ヨーグルト、ピクルス、メンマ、アンチョビ、サラミ、パン、バター、いろいろあるでよ。

 まぁ、バイオテクノロジーなんて、あんまり難しく遠巻きしないで、DIY感覚でやる時代が、そこまできているよ、というご宣託。

「コードとコードの『戦争』」 ケヴィン・スラヴィン p055

 こちらの型もMITメディアラボ助教授。タイトルから察することができるように、プログラムやアルゴニズムの進化の行く先を見つめる。残念ながら、プログラムやコートを一行も書けない(古いベーシックなら、なんとか理解できるけど、もはや役にはたたないだろう)私としては、とてもついて行けないし、あまり関心を維持できない。

 コンピュータVSコンピュータの将棋やチェス、なんてものや、株取引の心理戦など、勝ち負けにこだわるコンピュータの使い方には、私は一線を引いておきたい。ネットオセロなども、対戦はするけど、コンピュータとやっても、ちっとも楽しくない。コードとコードの間に、「人間」が存在しないとなぁ。

「個体としての人間の変化」 ドミニク・チェンp075

 1981年生まれの研究者、著書も多数。オープンソース、フリーソフトウェアなどについて触れている。

 ソフトウェア以外の著作物もまたオープンにしようというフリーカルチャー運動に属するクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのなかでも、フリーソフトウェアと同等の自由度を利用者に与える作品をフリーカルチャラルワークス(自由な文化作品)と定義している。p086「フリーカルチャーに通底する思想」

 オープンソースについてはシリーズ第2巻ネットを支えるオープンソース」にも詳しい。私はシェアするほどのソースは持っていないが、いつかは読書のデータベースになるかもしれないと、できるだけ再利用可能な形でブログを書いているつもり。クリエイティブ・コモンズ・ライセンス、のコモンズは、ネグリ&ハートの「コモンウェルス」に通じる筈。

「このテクノロジーはフィクションではない」 藤井直敬 p105

 1965年生まれ、医学博士。脳やヴァーチャル・リアリティ(VR)に触れている。VRは、例のセカンド・ライフで懲りているので、いまいち乗り気ではない。

 脳科学や人工頭脳などについては関心あるものの、当ブログの読書としては、すでに一定の飽和状態になっていて、受容領域が狭まってしまっている。

「3Dプリンターの自己再生メカニズム」 田中浩也 p140

 ドローンやら3Dプリンタやらという、IT界のトピックスには、なかなか面白いテーマも多いが、「人類の進化」という話題には届きそうにない。本文では、オープンソースやフリーソフトウェアについての言及もあるが、その話題については、上にも記したが、第2巻ネットを支えるオープンソース」ソフトウェアの進化 プログラマー が詳しい。

 ところで、ドミニク・チェンの文章のなかに次の部分があった。

 4分と33秒の間、全く演奏を行なわない演目に注意を向け、逆に体内や環境に偏在する音に気づかせるというコンセプトの楽曲「4’33”」を書いた20世紀のジョン・ケージは、米国で禅の思想を説いた鈴木大拙に師事して以来、「妨害なき相互浸透」(interpenetration without obstrukution)というフレーズに取り憑かれた。

 もともと仏教思想から鈴木が英訳した言葉だが、ここまで考えてきた私たちの言葉でいえば「妨害なき」とは他律的な制御の影響のない状態、そして「相互浸透」とは相互の有機構成が密接に連関したコミュニケーションとしてイメージすることができる。p95ドミニク・チェン「人間のためのデザインのプロセス」

 気になる部分であるが、本書全体として、ここと「人類の進化」がどれほど密接に繋がっているのか、ちょっと不明だった。

<3>につづく

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