「わがボタニカルライフ」<22> キミ、盆栽はいいよぉ~
<22> キミ、盆栽はいいよぉ~
「このインコは小父さんが彫ったんですか?」
「いやいや、ホームセンターから買ってきたものだよ。ほら、そこがゴミ集積所になってるだろ。いつもいつもカラスが群れをなしてやってくるんだよ。カラスは原色が嫌いだ、って聞いてね。これをおいたら、たしかに来なくなったね」
「はぁ、小父さんの、この盆栽の庭がカラスの休憩所になっていたりしたんですか。しかし、それにしても、すばらしい盆栽ですね」
「20代の頃からやってるからね。全部古いよ。これなんか挿し木して50年モノだよ。いま77歳だがね、若い時は工具製造の会社をやったりしていたから、結構歩いてね。本田総一郎とか、東芝の誰とか、若い時分に努力している姿を知ってるよ。その頃からの盆栽だからね。それでいろいろな人からもらったりあげたりしているんだよ」
「いやはや、ここは人生道場ですね」
「そうだよぉ。大きい話をするようだがね、県北のトヨタの工場も、私が言ったから来たようなもんだ」
「最近、テレビで植物男子という番組を見て、盆栽はなかなかおもしろそうだなぁ、と思ってたんですが」
「キミ、盆栽はいいよぉ~」(と、植物男子ベランダーの茂木梅吉のようなことを言う)
「何が一番いいですか?」
「生きてるからね。会話するんだ。ここを伸ばして欲しいとか、水が欲しいとか、植えかえてくれ、とかね」
「盆栽の水やりが大変で、町内会の旅行にも出かけられない、と、番組の小父さんはいってましたが・・・・」
「そこがいいんだよ。毎日毎日。それが楽しみなんだよ」
「枯れたところもジンとか、なんとかいうんでしょ・・?」
「まぁいろいろあるがね。私は品評会とか出したりしないから。針金で曲げたりしないよ。伸びるように伸ばしてやるのさ。今年は秋風が吹かないね。だから、植物もおかしくなってる。春しか咲かない花が、秋に咲いたりしている。世の中おかしいなぁ。男同士が結婚したり、犯罪が増えたり。安倍晋三なんか、だめだな。あいつは唯物論者だ」
(玄関に、最近の県会議員候補者で落選した自民党候補者の連絡所の看板がドでかくあるが、知らん顔する)
「あのね、松はダメだよ。間違って切ると、そこから次の枝は絶対でてこないからね。その点、サツキはいいよ。切ってもそこからまた枝がでてくるからね。修正がきく。こっちは根上げ、っていってね、これは根っこなんだよ。小さな鉢に入れておくだろ、そうすると、根っこが盛り上がってくるのさ、それを洗ってあげるんだよ」
「これ全部挿し木だよ。そこから大きくするんだ。コヤシは売ってるもので十分だよ。むしろ水やりだな。水が足らなくなる。冬でも水は必要だ。冬にやり過ぎても凍ったりはしないよ。葉水も必要だよ。葉っぱを洗ってあげるんだ。葉っぱも水を欲しがってるからね」
「焼き物もずいぶんありますね」
「若い時分からつきあっている信楽焼の作家がいるからね。ほらこっちのカエルは背中に5匹の子供が乗ってるだろ。これで6匹で、ムカエル、っていうんだよ。こっちのミドリのカエルは注文してつくらせたんだがね。色を出すのが難しいらしい」
「いやいや本当に素晴らしいものがたくさんありますね。たんなる通りがかりで質問ばかりですみませんでした。また、そのうち通りかかったら、拝見いたします。ありがとうございました」
(あの小父さん、どことなく、カエルに似ていたな)
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