「平和のエネルギー―トリウム原子力」 ガンダムは“トリウム”の夢を見るか? 亀井敬史
「平和のエネルギー―トリウム原子力」 ガンダムは“トリウム”の夢を見るか?
亀井敬史(著) 2010/09 単行本 雅粒社; A5版 ソフトカバー 88ページ
No.3623★★★☆☆
2010/09の発行、3・11の半年前の出版である。そして本書には続刊として「Ⅱ」があり、2011/11に出版されている。続けて読みたかったが、今のところ近場の図書館には入っていない。おそらく改訂されて、よりトリウム原子炉に期待を集めたい内容になっていることだろう。
3・11前の私がこの小冊子を読んだなら、ふーん、そうなのか、それなら安心だな、と思ったに違いない。いや3・11から4年半以上経過した時点でも、へぇー、こういう技術があるのかぁ~と期待したに違いない。それが3・11前の本であったとしても。
しかし、小出裕章氏のコメントを知ったあとでは、ことはそう簡単ではないぞ、と眉に唾をつける。
小出「トリウムなんてものをウラン233に変えてやろうなんていうことは、もともと、遥か先、というか技術的にはもう夢のようなこと、でしか、可能性がありません」
千葉「はあ…、あの、もともと放射性物質じゃないものを放射性物質に変えて発電をしようということなんですか?」
小出「え…もともとウラ…トリウムの232も放射性物質なんですけれども」
千葉「そうですか」
小出「はい。それを、放射性物質であり、なおかつ核分裂をするという性質を持ったウラン233に変えて、エネルギー源にしようという、そういう計画です」
千葉「ふーん。もちろんこれ、あの、放射性廃棄物も出て…」
小出「はい」
千葉「くるし、」
小出「全く同じことになります」
千葉「はあ……。じゃ、本当になにか新しいことをやるとか、あの…画期的なう…その新技術というわけでは、ぜんっぜんないわけですね」
小出「(苦笑)はい。全然ありません。ただまあ原子力をこれまで進めてきてしま、した人たちが、なんとか生き延びるための方便で今言っているだけだと私には見えます」
千葉「あの、このトリウム原発っていうのは、世界のどこかで、例えば、動いていたりとか。そういったことっていうのはないんですか」
小出「1つもありません」
千葉「1つもないんですか!」
小出「はい」
現実は厳しい。
ネットで検索してみると、原子力委員会というところの「トリウム溶融塩炉の開発の現状について」2013-5-9 というPDFファイルが見つかった。日本の取り組みのほかに、アメリカ、中国、フランス、韓国、インド、チェコ、欧州などの状況に触れている。
あまり真面目に見る気もないし、読解力もないのでしかたないが、可能性がある、検討している、研究している、というレポートはあっても、すでに成功し、実用化しているという報告はない。
世の中に、このような本が流布されていて、疑心ももたずに読んだら、ふーん、なるほどな、と思うに違いない。だから、私の、あの古い友人があのような意見を言うとしても、不思議ではないのだ。確かめようもないし、夢を持つのは、それぞれの自由だから。
小出「え…インドが、ウランを使う原子力はダメなので、なんとかトリウムを使いたいということで、研究をしていることは本当です。ただ、今聞いていただいたように、1つとして実用化していません」
だがしかし、現実を直視しないとなぁ。
| 固定リンク
「15)ねぇ、ムーミン」カテゴリの記事
- 「瞑想―祝祭の芸術」 Osho<4>(2015.12.31)
- 「ムーミン谷の彗星」 トーベ・ヤンソン原作 斎藤博監督(2015.12.31)
- Comet in Moominland (The Moomins #2)(2015.12.31)
- 「ムーミン谷の彗星」 新装版 トーベ・ヤンソン<1>(2015.12.31)
- 「死について41の答え」 OSHO 伊藤アジータ<4>(2015.12.31)
コメント