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2015/12/03

「トリウム原子炉の道」 世界の現況と開発秘史 リチャード・マーティン <1>

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「トリウム原子炉の道」 世界の現況と開発秘史 <1>
リチャード・マーティン(著), 野島佳子(翻訳)  2013/10 朝日選書 単行本 424ページNo.3620★★★☆☆

 この本を開く前に、まずいくつかのことを整理しておかなくてはならない。

 私は脱原発派であり、周囲の人々、特にSNS繋がりなどではおおよそ100%脱原発派と考えていい。ところが、ここが曲者で、仮に原発推進派がいたとしたら、自然と意見が合わなくなり、つながりがいずれ切れてしまうことになるのである。

 したがって、私のネット社会は脱原発で決まりなのだが、3・11以前というよりも、人生の沢山の局面において作り上げてきた人間関係では、かならずしも脱原発派ばかりではない、ということをうすうす気づいているのである。

 家族、親戚、古い友人、仕事関係、お客さん、町内会、さまざまな人間模様があり、SNSつながりのように、脱原発一色とはいかない。ましてや、脱原発でなければ付き合わない、絶交、なんてことはそうそう日常的にはできるわけではない。まずそのことを押えておかなければならい。

 もっと露骨に言えば、原発に永年働いている古い友人もいる。これまで原発の施設の建設に関わった友人もいれば、これから、六ヶ所村の原発施設のプロジェクトを担当しなければならない、という友人もいる。しかも、決して嫌々ではない。積極的な推進の意図を持って働こうとしている。

 私は、そのような人々をひとりひとり切り捨てて行くことも、可能でもあろうが、さて、そのことは一体、どういうことなのだろうか、と疑問になることもある。ある友人によれば、核分裂原子炉では放射線がでるが、核融合原発になれば、危険ではなくなる。ましてこれからの人類の人口増加や、宇宙への進出を考えれば、各技術は必要不可欠だ、と言う。

 私は、根っからのアバウト人間なので、科学的にどうのこうの言われると、分からなくなることがある。ましてや核技術のことなど、専門家に任せておけばいいわけだし、聞いても判断しかねる。信頼すべき人に聞けばいいわけである。

 そういう意味においては、私は核技術に関しては小出裕章氏の考え方に最も依拠しているし、それ以上の信頼できる技術者は知らない。ところで、彼は、あるところで、質問を受ける形で、「新しい原発とか、小型で安全な原発は不可能だと思います。可能だと思う人は、そのような研究をしてください」という発言をしていたと思う。

 それは「福島原発事故  原発を今後どうすべきか」 (2012/04 河合ブックレット)のなかで、予備校生の質問に答えたのだと記憶していたが、どうも私はメモし忘れたみたいである。あるいは記憶違いか誤解であるかもしれない。これは、要確認である。いずれにせよ、私の気分は、核は絶対反対、という意見に賛成である。

 そして、「ガイア理論」のラブロックはこう言う。

14)わたし自身は、無条件の原発支持者ではまったくない。よく簡便軽量な核融合が発明されるという悪夢にうなされるくらいだ。それは電話帳ぐらいの大きさの小さな箱で、表面に普通の家庭用電気ソケットが四つついている。

 その箱は取り入れた空気中の水分から水素を抽出し、それを燃料に最大百キロワットの出力が可能なミニ核融合を起こす。それは安く、信頼性があり、日本製で、世界のどこでも手にはいる。完璧、クリーン、安全と三拍子そろったエネルギー源で、核廃棄物も放射能もまったく出さす、危険な故障もけっして起こさない。ジェ-ムズ・ラヴロック「ガイアの時代」p281 「第七章 ガイアと現代環境」

 いろいろな背景から考えると、実に噴飯物の発言だと、当ブログは切り捨ててきているわけではあるが、さて、「ホール・アース・カタログ」のスチュアート・ブランド「地球の論点」現実的な環境主義者のマニフェスト(2011/06 英治出版)では、自身が脱原発派から、原発容認派に転向したようなことを語っている。

 当ブログは、この時点で、その議論から降りてしまったのだが、どうも気になってしかたない。最近読んだアントニオ・ネグリにおける「原子力国家」という考え方にも納得するところがある。

 さて、すでに起きてしまった事故の処理は必要だし、欠陥のある原発は稼働させていけないのは当然であるが、いくつかの条件が重なった場合、私の現在のこの考え方で正しいのかどうか、自分でも再点検する必要を感じる。

1、放射線被害のない原発は開発可能なのか?

2、核兵器を生み出さない原発は可能なのか?

3、原発以外に電気を効率よく生み出す方法はないのか?

4、虚心坦懐に地球温暖化に向かった場合、ほかの解決策はないのか?

5、ウランとトリウムで、そんなに違うのか?

6、今からでも間に合うのか?

 その他、いろいろあるが、まずは、この本を読む前に、助走として以上メモしておく。ないし、以上のような問題意識、考え方の変転から、とりあえず、この本を読むことになった、ということをメモしておく。

<2>につづく

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