飯沼勇義「3・11その日を忘れない。―歴史上の大津波、未来への道しるべ」<10>
「3・11その日を忘れない。」 ―歴史上の大津波、未来への道しるべ <10>
飯沼 勇義 (著) 2011/06 鳥影社 単行本 208p
★★★★★
1)すでに何度も開いてきた本だが、この度、他の二書とともに、友人にプレゼントしようと思い立ち、自分の目ではなく、彼の目で、彼の立場でなら、この本はどう読まれるだろう、と考えた。
2)限りなくベタなタイトルで、下手すると、中学校の卒業論文集かなにかか、と見まがうようなフレーズではあるが、驚愕の飯沼史観へ私をいざなった、大事な一冊である。今後も何度も何度も開くに違いない。
3)さて、今回、63歳にして中国地方から初めて東北に入り、前日に花巻やイーハトーブの賢治の世界を旅してきた友人夫婦であれば、どこかに賢治つながりがあるはずだと、探してみた。
4)これまではあちこちに賢治が登場していたように思っていたのだが、実はそれは勘違いだったかもしれない。あるのは一か所。
5)東北はまったく新たに再出発するだろう。他の日本の地域とは歴然とした違いを明確に打ち出し、自然と一体でありながら、同時にもっとも高度な技術文明を維持できる、その規範となるべき東北州が誕生するだろう。その精神を導くものは、おそらく東北の詩人、宮沢賢治の理想ではないだろうか。
彼ほど東北の人々を、東北の自然を愛した者もいない。彼は原体剣舞連やネブタに先住の蝦夷の民の屈折しつつも爆発的な初源のエネルギーを見ている。東北の農民に世界に連なる高い意識を求めている。
彼は一介の詩人ではなく、宇宙銀河を探索する天文家であり、自然と人間の共生を模索した科学者であり、農民のために土壌を研究し、たくさんの時間を農民のために割いた農業指導者でもあった。
宮沢賢治を愛する人は多い。たくさんの人が彼の「春と修羅」や「銀河鉄道の夜」を読むだ。だが、いま私たちに求められているのは、私たちもまた、彼のようにつましく、真摯に、ひたむきに、大地に頭をたれ、天の川の輝きに目をやり、一輪の花に無限の世界を想い、一匹の鳥にも愛情を注ぐ、そういう生き方をするということではないだろうか。p200「これからをどう生きるか、災害哲学の構築」
6)当然といわば当然な文章だが、これだけの歴史津波を研究してきた男の、このフレーズをわが友人に聞かせたかった。この繋がりがあればこそ、あとは飯沼史観でも、古事記、日本書記、あるいはホツマツタエであっても、とにかく、古事古伝、伝説、神話の世界であったとしても、とにかく友人は読みこなすだろう。
7)とかく東北にいる私などは、自らの地の利に気づかないことも多い。賢治などはすぐ隣部落の青年だろう、くらいにとらえて、珍しくなさそうな顔をしがちになる。しかし、東北のこの地の持っている特殊性については、むしろ、遠くからやってくる人々によってこそ発見されることも多いようだ。
8)なにはともあれ、今回この三冊の再読モードにあり、どうしてもまだまだ解ききれていないぞ、と思ったところを、二三あげておく。
・九代日高見である、角田市島田の熱日高彦神社についての研究なり記述は、その重要性の強調性のわりには、まだまだ著者としては説明不十分だと思われているのではないだろうか。
・岩手遠野在住の千葉富男氏のホツマ観についても、まだまだ説明不十分なのではないだろうか。全体像を把握したとしても、語られているのは、ごくごく一部の接点についてだけである。もうすこし深めた説明をしていただきたい。
・科学者、発明家、特許保持者としての、フルボ酸鉄などについての理解が、私には不足している。そもそもがあまり読みこむ意欲がないのだが、もうすこし具体的に、現物を見るとか、実際に実験したり、活用したりすることの必要性も感じる。
・そしてなんであれ、この5年間、すぐ近くに住んでおられながら、そしてその被災したという旧宅をも訪問しながら、いまだ著者と面識を持っていないことが、実に惜しいと感じられる。5年間、講演会なり、なにかの折りにお会いしてみたいものだと、思いつつ時間ばかりが過ぎてしまった。もうすこし氏との距離を詰める時期が来ているのかもしれない。
9)そんなことを感じながら、この本の凄さを今日も感じていた。
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