「1968新宿」 渡辺眸写真集
「1968新宿」
渡辺眸写真集
渡辺 眸(写真)2014/08 街から舎 単行本(ソフトカバー): 160ページ 渡辺眸関連リスト
No.3750★★★★☆
1)当ブログによるカメラウーマン追っかけもそろそろ終盤である。この本は彼女の作品の中では最近に属する一冊であろう。しかしながら、その最近作が最もデビュー時代に近い一作というのも、何やら面白い。
2)私の手元に来たのは中身だけだったが、実際にはカバーケースが付いているらしい。腰巻に推薦文を書いているのは荒木経惟。「これは過去の写真ではない。現在の写真である。」
3)この本には、頁も、キャプションもない。ただひたすら1968年の新宿らしき風景が、白黒で続く。いきなり名の知れた人も登場する。なにやら演歌歌手、丸山(のちの美輪)明宏、加藤登紀子、浅川マキ?、山本コータロー?、なにやら状況劇場、赤テント? 唐十郎、四谷シモン? その他、いろいろ。有名無名の人々が、フラットに一枚一枚の風景に解けきっている。
4)ふと、見つけた一枚は、ひょっとすると、あの有名なお方ではないだろうか。一緒の女性はおそらく娘さんだろう。プライベートにこの距離でこの写真を撮ったというわれらがカメラウーマンは、どういうご関係だったのだろう。
5)まったく偶然だが、たまたま同じ日に図書館で受け取った別の本には、このような写真が掲載されていた。
「癒される旅」 田岡由伎(1999/10講談社)
6)上の写真は、タイトルどおり「1968年新宿」として、下の写真は「1971年神戸」ということになる。おそらく、この二枚に写っている人びとは、同一人物であるように、思えた。
7)この写真集、1968年とは銘打っているものの、「東大全共闘1968‐1969」(2007/10 新潮社)とは一線を引いた世界である。ある思想的な嗜好性を排除して、ひたすら「新宿」を追っている。
8)荒木経惟がどう言おうと、これは1968年の新宿である。フーテンの新宿、フォークゲリラの新宿、だが、決してそこに拘泥しない。もう50年も経過した、あの時代の日本の風景である。
9)ところで、この写真集は「株式会社街から舎」というところからでている。発行者はあの「新宿プレイマップ」の本間健彦である。彼の本は二年ほど前に「60年代新宿アナザー・ストーリー」タウン誌「新宿プレイマップ」極私的フィールド・ノート(2013/06 社会評論社)を読んだ。
10)話はまったく変わるけど、本間はこの自著でマンジェロの「古新聞」に触れていて、なかなかに興味深かった(笑)。
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コメント
このカメラウーマンのリアリティには、結局、近づけなかった。彼女の被写体には面白いところが、沢山ある。されどおそらく私にそもそものカメラマインドがないので、文章を残さずカメラだけで表現するというスタイルが、理解できないのであろう。カメラワークには、そこでしかないリアリティがあり、再現性を拒否する厳然性がある。であるがゆえに、多くの人に一気に訴求する力があり、劇的でもある。羨ましいと思いつつ、その時に自らの内面に漂う風景を固定しないことが、私にとっては、決定的に不満である。
投稿: Bhavesh | 2018/08/12 00:05