「<インターネット>の次に来るもの」 未来を決める12の法則 ケヴィン・ケリー<3>
「<インターネット>の次に来るもの」 未来を決める12の法則 <3>
ケヴィン・ケリー (著), 服部 桂 (翻訳) 2016/07 NHK出版 単行本: 416ページ 目次
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1)原題は「THE INEVITABLE」UNDERSTANDING THE 12 TECHNOLOGICAL FORCES THAT WILL SHARPE OUR FUTUER」である。邦題は当たらずとも遠からずだろう。
2)12の法則と言われるものはそれぞれ12章のタイトルになっている。
1.BECOMING(ビカミング)
2.COGNIFYING(コグニファイング)
3.FLOWING(フローイング)
4.SCREENING(スクリーニング)
5.ACCESSING(アクセシング)
6.SHARING(シェアリング)
7.FILTERING(フィルタリング)
8.RIMIXING(リミクシング)
9.INTERACTING(インタラクティング)
10.TRACKING(トラッキング)
11.QUESTIONING(クエスチョニング)
12.BEGINNING(ビキニング) p5 「はじめに」
3)それぞれのタイトルに合わせたような形で、現在の話題になっているような事象をひとつひとつ取り上げていく。これだけではわかりにくいので、あえて要約した形で日本語に訳しておくと・・・。
1、なっていく。永遠にアップグレードをし続けること。
2、認知していく。認知されていく。
3、流れていく。コピーなどとして流れつづけていくこと。
4、スクリーン化していく。一つの画面として見ること。
5、アクセスしていく。所有せず、活用すること。
6、シェアしていく。秘匿化せずに分かち合うこと。
7、フィルターをかけていく。本当に必要なものを順に選別する。
8、再統合していく。異質だったものを混ぜ合わせてみること。
9、相互作用していく。複数のものを同時にかかわらせてみること。
10、追跡していく。データや活動を常時見続けること。
11、問うていく。次から次へと質問しつづけること。
12、始めていく。今こそ新しい時代の夜明けであること。
4)と、まぁ、一読者としての意訳で理解したのだが、まぁ、当たらずとも遠からず。この結論に至るまで、ケヴィン・ケリーは具体的なシリコンバレーやネット上での例を挙げて、つなげていく。実際は、インターネットの次に来るもの、というよりは、この30年間のパーソナルコンピュータからインターネットの社会で起きていることを、ごく最近までの経緯として網羅しているだけであり、そこからさらに次に来るものについては、実際は、読む読者そのものがおのおのイメージしなければならないことになる。
5)ビットコインやブロックチェーンについては、明確に章立てて書いてあるわけではないが、5.ACCESSING(アクセシング)に詳しい。
6)ブロックチェーン推進派の中には、分散化・」自動化したブロックチェーンのテクノロジーを使えば複雑な照合作業を順に続けていく取引(例えば輸出入業務)を可能にするツールが作れると提案する人もいて、すなると、ブローカーに頼っている多くの業界で大きな破壊的変化が起きる。
ビットコイン自体が成功するかどうかは別にして、ブロックチェーンのイノベーションによって不特定多数の間で非常に高い信頼性を確保できるようになれば、さらに制度や産業の分散化が進むだろう。
ブロックチェーンの重要な側面は、それが公的な共有地(コモンズ)の性格を持つことだ。誰もそれを所有しているわけではなく、言うなれば、皆が所有している。創造する行為がデジタル化すれば、それはより共有され、共有されれば所有者はいなくなっていく。
誰もが所有するということは、誰も所有していないことに等しい。それこそ、共有財産やコモンズの意味するところだ。p161「ACCESSING」
7)ここからもまた、ドシロートの一読者としての感慨だが、インターネット世界での、永遠に続いていくアップグレイドやとどまること知らないクラウド化の波の中にあって、個的に所有することができなくなっていく生産物や所有物に対して、ブロックチェーンは、その仕組みそのものを全体で共有認知しながらも、そのプロセスを誰もが改ざんすることができない形で表現し、保存しつづけることができる。それはまるで、インターネットの本質とは、真逆の性格を持った機能なのだ。
8)共有しつつも、ほぼ確実にその個的な信頼を確保することができるという、ある意味、インターネットが生み出した、真逆の仕組みこそ、インターネットを超える革命的な発明である、と言われる所以である。
9)この機能は、現在はビットコインなどの仮想通貨などで具体化し始めているが、さらに別な形で表現され活用される日を待っている。誰も管理せずにしかも確実に信頼されるもの。考えてみれば、そんなものほとんどない。お空に浮かぶ太陽かお月様くらいしかないのではないか。
10)ネグリ&ハートは、 マルチチュードが、憲法、貨幣、武器、を自らで管理しないことには、「<帝国>」を乗り越えることはない、と喝破する。おそらく、ここで言われるところの貨幣のイメージに、ビットコインなどの発展形の仮想通貨が台頭してくることはありうる。
11)そして、その貨幣が現在はそれぞれの国家が発行し管理していることを考えると、その根本的な足場を崩しつづけていく可能性は高い。現国家体制が、その対応に苦慮している姿が目に浮かぶ。しかし、技術革新はもっともっと進むだろう。国家が仮想通貨を追い落とす前に、国家自体が破壊的ダメージを受けてしまう可能性は高い。
12)さらに、国家的存続の意義が薄らいでいけば、一国的なルール「憲法」もまた、別な仕組みで、他国と融和的、あるいは共有として再作成されなければならない時期もくるだろう。ECからのイギリスの離脱など微妙な現象もあるが、地球大に広がった村には、それほど際立ったローカルルールは不要になるはずである。
13)憲法があり、貨幣があればこそ存立しえた「国家」という途中経過的残照は、次第にその姿を薄めていくだろう。そして、いずれは「戦争」しようとしても、誰が誰と戦うのだ、という「アングル」を失って、それを支える「波」も胡散霧消していくことになるだろう。
12)今、国家というものは、本当の「勢い」を持っているだろうか。必要悪だった現代国家というい概念は、いずれは、地球の一部地方を指し示す、町名や山や湖を指すような用語となるだろう。あちらの海と、こちらの平原では、確かに違いがあるが、山も海も湖も平原も砂漠も山岳もあってこその、ひとつの地球なのである。それは誰に所有されるものでもなく、誰もが所有することができる、共有財産(コモンズ)なのだ。
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