「FinTech入門」テクノロジーが推進する「ユーザー第一主義」の金融革命 辻庸介他

「FinTech入門」 テクノロジーが推進する「ユーザー第一主義」の金融革命
辻 庸介 (著), 瀧 俊雄 (著) 2016/4/14 日経BP社 単行本 208ページ
No.3799★★★★★
1)穏健的で、誰が読んでも、なるほどね、とわかりやすい一冊。今のところ、この一冊だけを読んでフィンテック理解と言っても、全然おかしくない。むしろ、この本だってかなり革新的で、すぐにこの世界へと移行できる「ユーザー」はいない。
2)逆にいうと、「ユーザー第一主義の金融革命」というサブタイトルはウソになるだろう。これは、ユーザー第一主義という看板を掲げたい、企業や専門家たちファーストの世界観である。
3)かくいう私なぞ、現在のところ、一SOHO経営者として、ずいぶんと使い回してきた会計ソフトを、いよいよバージョンアップするかなぁ、とか、金融業の端くれとして、インステックなどと言われるイノベーションが、いずれやってくるよ、などと業務セミナーの席で驚かされる程度で、実際には、急にはなにも起こらない。
4)著者は二名とも、個人や中小企業向けの会計ソフトを作っていたり、企業のAPIにかかわるコンサル企業を立ち上げている存在で、ある意味、きわめて穏健。このまま、この著書を持っていって、オタクの会社でコンサルや講演をやらせてください、とプレゼンに使えるような、バランスのとれた良き資料である。
5)バランスよく、ブロックチェーンなどにも触れてはいるが、その「革命性」などには躊躇せずに、今は使えない、と単純に切り捨てるだけ。両者とも本音ではないだろうが、そういわざるを得ない。触れないでおいたほうが得策と、遠回りしている感もある。
6)もっとも、フィンテックという語彙には幅があり、このように解釈してもなんの問題もない。こういうものだ、と通り過ぎてしまってもなんの問題もない。
7)日本でも会計ソフトはインストールベースがまだまだ主流で、弥生の「弥生会計」やオービックビジネスコンサルタントの「勘定奉行」などが知られています。しかし、今後徐々にクラウドサービスを利用する会社が増えてくるでしょう。
すべてをクラウド化しなくても、請求書発行のような毎月発生する煩雑な作業をクラウド で自動化すると、その便利さを実感できるはずです。p70「企業会計、経営・」業務支援」
8)さりげなく自社の営業活動を刷り込ませている。
9)損害保険で今、注目されているのは、「テレマティクス」と呼ばれる保険です。テレマティクスとは、テレコミュニケーション(通信)とインフォマティクス(情報工学)から作られた造語です。
自動車などの移動体に通信システムを組みわ会わせて、自動車などから走行距離や運転の特徴、例えば、アクセルの踏み方やブレーキの掛け方などの運転を保険会社に送信し、その情報を基に保険料を算出した保険です。
既に英国や米国では導入が進み、2020年には、契約件数の約2・3割を占めるのではないかともいわれています。p129「保険」
10)この程度の憶測記事を含ませておかないと、本としては売れない。こんなことも可能ですよ、ということではあるが、外国はいざ知らず、私たちの暮らす日本では、あと数年でこのようになることは、あり得ない。
11)手間と経費を考えれば、むしろ保険料全体が増加する。いろいろ試みやアイディアはあるが、それを一般化するには、日本社会はもうすでにかなり動脈硬化してしまっている。
12)いろいろ難はあるが、フィンテックについて、何か一冊、というなら、この本はよくまとまっている。わかったようなわからないような、一ユーザーという立場では、何を「第一主義」にされているのかわからない一冊。
13)むしろ、「ユーザー第一主義」を掲げる企業や専門家たちにとって、都合のいい未来像を集めた一冊。
14)「革命」的なユーザーは、こういう本に対しては、本当は、大きく怒りをあらわにしたほうがいい。
| 固定リンク
「10)FinTech」カテゴリの記事
- 「WIRED VOL.25」/特集 The Power of Blockchain ブロックチェーンは世界を変える<4>(2016.11.02)
- 「地球の論点」 現実的な環境主義者のマニフェスト<4> スチュアート・ブランド(2016.11.02)
- 「WIRED VOL.9」 OPEN GOVERNMENT ひらかれた政府 デジタル時代の「ガヴァメント」<3>(2016.11.02)
- 「開かれる国家」 境界なき時代の法と政治 角川インターネット講座 (12) 東浩紀(監修) <2>(2016.11.02)
- 「講座スピリチュアル学」 第3巻 スピリチュアリティと平和 (地球人選書)鎌田 東二(編集)<10>(2016.11.01)


コメント