「FinTech革命」 テクノロジーが溶かす金融の常識<2>
「FinTech革命」 テクノロジーが溶かす金融の常識<2>
日経コンピュータ (編集) 2016/01 日経BP社 単行本 204ページ
★★★★★
1)ブロックチェーンという根幹技術は、まずはビットコインというマスクをかぶって、<勢い>をもって登場した。それに呼応したのが、銀行や決済機関、送金システムなどを含むフィンテックといわれる<波>であった。
2)そして、もっと大事な<アングル>は、1970年代のパーソナルコンピュータ、1990年代のインターネットに続く、ブロックチェーンというさらなるイノベーションである(進化とも革命とも)、というフレーズである。
3)思えば、1970年代の末、私たちの目の前に初めてやってきたのは、おそらくインベーダーゲームという、当時大流行した喫茶店用の専用ゲーム機だった。どこの店からもピコピコという音が聞こえてきた。
4)連続的な反射神経を要するゲーム機は、青少年たちを夢中にさせた。私などは、あっという間にコインを10個20個飲み込んでしまうゲーム機に夢中になれず、ああ、こりゃ、だめだ、と早めに切り上げた。
5)しかし、それからパソコンが登場し、そのパソコンで何をやるの?と聞かれたら、やはりインベーダーゲームをやれるよ、ということだったので、ああ、それはどうかなぁ、と嘆息した。半面、ルービックキューブが図解入りで一人で完成図に向かっていくカラーページには実にビックリした。
6)それからパソコンという「箱」は、さまざまなことができるようになった。星占いも、表計算も、ワープロもできるようになった。あれもこれもできるようになり、人々は、一体パソコンには何ができるのか、あれこれ考えるようになった。
7)パソコンという存在の、本当の技術革新は、半導体という最も根幹にあったのだろう。単なるそのチップだけ見せられても、私のような専門外の人間には、やがてそれがパソコンにつながり、日々の業務や遊びなどがどんどん置き換えられていくことなど、想像もつかなかった。
8)ワープロ専用機をつないで文章だけのパソコン通信をしていた私は、インターネットという画像が飛び出してきたのには、本当にびっくりした。電話線をつないで、大変な時間と大変な電話料がかかったが、その通信の向こうには、久しぶりに再会する昔の多くの友人たちが続々登場した。
9)最初は、ネットつながりであることだけで素晴らしかった。たわいのない雑談をするだけの仲間ではあるが、彼らとも、またネットでつながり得るんだ、という驚きは大きかった。ネットするだけで満足だった。
10)しかし、それはどんどん活用範囲が広がっていった。ホームページを作ったり、チャットで一晩中話せるようにすらなった。そして、アダルトページが闊歩した。しかし、そこにとどまっていたら、今日のネット社会は登場しなかっただろう。また、本当にあの当時、今日のインターネットの「繁栄」を予測し得た人々はいただろうか。
11)インターネットがこれだけつながり得たのは、パーソナルコンピュータという基礎が限りなく広範に広がったからだし、やがてケータイやスマホ、タブレットという進化を遂げることによって、その基盤を広げたからだった。
12)さて、ブロックチェーンという<勢い>は、やはり、通信手段としての常時接続や携帯可能な通信手段スマホという機器が、ごくごく当たり前に入手できる21世紀だからこそ登場しえた存在であるといえる。
13)おそらく、ブロックチェーンという基礎技術は、半導体や、TCP/IPという通信プロトコルの発明と同じように、基礎の基礎となるものであろう。そこから何を生み出すのかは、これから、それぞれのイノベータ達が競いあっていく中で、より明確になってくるだろう。
14)現在、パソコンでインベーダーゲームをしたり、インターネットでアダルトページを見ている、というそれだけの、最初の最初のところにいるのが、ブロックチェーンとビットコインなどのいわゆる「フィンテック」などの現在の次元であろう。
15)ゲームやアダルトサイドだけに目を奪われていれば、そこから未来が見えなかったように、ブロックチェーンからフィンテックレベルだけのイメージしか浮かばなければ、おそらく、ブロックチェーンの本来の意味を大きく見失ってしまうことになるのだ。
16)最近は、そう思うようになってきた。
17)半導体のおそろしいほどの緻密さ、TCP/IPの限りないほどの膨大さ、それに対応するほどの遠大な計算システムに支えられているブロックチェーンだが、それは次なるイノベーションの米粒となるのだ。
18)ブロックチェーンという<勢い>には、本当にそれだけの<勢い>があるのだろうか。それは専門家ならざる私にはわからない。フィンテックという<波>は、ブロックチェーンの成果の最終形態なのだろうか。そうであるなら、結局私などは夢中になり切れず、すぐに飽きるだろう。
19)パーソナルコンピュータ、インターネットに続く、根幹的なイノベーション(進化&革命)と言われるほどの<アングル>の中に、本当にブロックチェーンは成長していくのか。そこをみきわめなければならない。
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