「WIRED (ワイアード) VOL.1 」特集OUR FUTURE テクノロジーはぼくらを幸せにしているか?<4>
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(GQ JAPAN2011年7月号増刊) 2011/06 コンデナスト・ジャパン 不定版 27.2 x 19.8 x 0.6 cm WIRED関連リスト VOL.1について
★★★★★
<4>チェルノブイリ 25年目の”楽園”
1)この記事では25年目となっているが、この号がでてから5年が経過しているわけだから、さらにチェルノブイリの詳細な研究がでているに違いない。また同種のレポートはたくさんあるわけだから、この記事ひとつに拘泥するのは、あまり賢いやり方ではない。
2)しかしながら、現在の当ブログは、チェルノブイリの事故を検証しているわけではない。逆に、チェルノブイリをどのような扱い方にするのかを見極めることによって、WIRED誌そのものを検証しようとしているのである。
3)この記事は、翻訳ものである。おそらく何号か前に米誌で発表されたものだろう。投稿(依頼)記事だろうから、必ずしもWIRED誌全体の決定的な視線とは言えないだろう。そしてまた、同種の記事はかつての同誌においても複数あったに違いない。
4)それでもなお、まずは日本版創刊にあたり、ほぼ巻頭にこの記事をもってこざるを得なかったのは、日本誌が自らの3・11レポートの記事を「書けない」が、まさか一切3・11を無視しては、ジャーナリズムを標榜する同誌としては存在しえない、との判断があっただろうと推測する。
5)しかし、なぜ「書けなかった」のか。
・それほどのレポートをする資力がないのか。
・そもそもが米本誌の翻訳雑誌なのであり、日本語版独自の許されている範囲は限られているのか。
・あるいは、テクノロジーを標榜しつつも、原発を扱うことは、やはりどうしても広告に依存するメディアとしては、周囲を見回す必要があったのか。
・まだ正確も明確になっていない創刊の立ち上げ時ゆえ、ひとつの話題に深くコミットメントすることで、必要のない性格付けをされることを嫌ったのか。
・逆に、本来は様々な条件があるにせよ、本誌は原発「推進」派、あるいは「容認」派なのであり、原発をもろ手を挙げて賛成しないまでも、感情もこもった反原発派とは見られたくないのか。
・さまざまな考えが浮かんでくる。
6)しかし、このチェルノブイリのレポートを見る限り、両論併記の姿勢を崩しておらず、また、実際の被害というより、それを科学者たちはどのようなレポートをしているか、というレベルに抑えている。全体的な原発を見極めているわけではない。それはそうだろう。
7)原発についてのキチンとした「科学的」な結論はまだ出ていないのだと思う。当ブログは、科学者でもなければ原発に直接かかわる立場でもないので、詳しいことはわからない、専門家に聞く、という姿勢を取っている。そして、その一番信頼すべき原発科学者は、小出裕章氏である、と認識している。
8)氏の著書は限りなく読ませていただいているし、講演会にも二度ほど出席した。私にとっては極めて説得力のあるお話しをされる方である。彼の言説には心より感服するとともに、今後の人類の進むべき道も示唆されているようにすら感じられる。
9)最近では「『走る原発』エコカー」 危ない水素社会(上岡直見 2015/07 コモンズ)の対談にも登場され、当ブログとしては、またまたたじろぐような読後感に、実はヘナヘナになってしまっているのだ。
10)さてWIRED誌には過去記事を一冊にまとめて電子本にしたショートストーリーというシリーズがある。その中の一冊が「THE NEW NUKE」 トリウム原発の新時代(WIRED Single Stories 008)Richard Martin である。かつて原発開発史の中で淘汰されてしまったトリウム原発について、夢を語っているのだ。
11)リチャード・マーチン「トリウム原子炉の道」(2013/10 朝日選書)もあるし、「原発安全革命」 古川和男(2011/05 文藝春秋)や、「トリウム原子炉革命」―古川和男・ヒロシマからの出発 (長瀬 隆2014/8 ゆにっとBOOKS)なども当ブログでは読んできた。しかし、いまいちよくわからない。トリウム発電については、小出氏は「過去に淘汰されてしまった夢物語、まったく可能性がない」と結論づけている。
12)WIRED誌とも縁の深いと思われるスチュアート・ブランドも「地球の論点」現実的な環境主義者のマニフェスト(2011/06 英治出版)で、なんとも面倒な論説を展開している。このあたりについては、もう5年も経過したのだ。当ブログとしてもそろそろ決着をつけなければならない時期にきているだろう。
13)決着をつけないまでも、直視する姿勢は立て直さなければならない。
14)そう最近になってまた強く思うようになったのは、私の周囲は決して脱原発派だけではないのだ、ということをまのあたりにしたからだ。古くからの友人の何人かは推進派であるだけではなく、その中で働いている。廃炉の道として働いているのではなく、自らの生活の糧として、その職業に積極的に就いているのだった。
15)職業に貴賤はないし、背に腹は代えられない。
16)当ブログは、理想的な見地からも小出氏一行の論説を基本としつつ、他の人々の意見についても、虚心坦懐に胸元を開いて、今後も聞いていくつもりだ。
17)また、少なくとも、WIRED今号において、原発についての問題提起はされているけれども、そこから一歩踏み込んだプロセスに入っているわけでもない。本質的な是非論は、まだまだ始まったばかりだ。
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