「開かれる国家」 境界なき時代の法と政治 角川インターネット講座 (12) 東浩紀(監修) <2>
2)理想的な民主制では、少数者の権利を守りつつ多数者が支配する。それが適切に行われるためには、民主制はさまざまなアイデアの間の競争を支援しなくてはならないが、そのためには、批判的なディべートや言論の自由、報復の恐れなしに権力を批判できる能力が必要とされる。
真の代表民主制においては、チェック・アンド・バランスを可能にするために、権力は複数の権力機関の間に配分されなくてはならない。p084伊藤穣一「インターネット民主制」
3)「講座スピリチュアル学」の小林正弥が地球人を語り、スピリチュアリティを語る場合、どこかそのスケールに対して日本語的ガラパゴス状況を連想させるのに対し、こちらは、そもそもが英文で書かれたものが他の訳者によって、日本語に翻訳された文章である。
4)ただ、おしむらくは、そもそも原文が書かれたのは2003年のことであり、この本が出版されたのは2015年である。10年以上の開きがあるので、ドッグイアーの情報社会においては、旧聞に属する内容とも言えなくもない。
5)それでもなお、編者はあえてこの文章をこの巻に入れたのであり、当ブログとしても、このインターネット講座の最終巻の第15巻「ネットで進化する人類」ビフォア/アフター・インターネット 2015/10 は、伊藤穰一が 監修していることを考える時、やはりここはこの文章で正しいのではないか、と思う。
6)社会的ネットワークは、在来型のウェブログの形のネットワークだ。こにには”150の法則”が作用している。それは、人々が維持しうる個人的関係の数は、平均150だという理論だ。
150の法則は、釣鐘型の分布を示していて、ウェブログの中には他のウェブログよりも多くの注目を集めるものもあるが、分布の形はウェブログの質を公正に表している。p102伊藤穣一「メイフィールドのエコシステム」
7)ここで伊藤が言っているウェブログは、すでに日本でも定着しているブログのことであり、2003年の段階では、ブログはもとより、大型掲示板、ソーシャルワークやツイッターなどもまだ一般にはほとんど知られていなかった段階であり、彼のいうところのウェブログ論には、それなりに説得力がある。
8)150の法則の他に、6次の隔たり理論なども協調されていて、当ブログとしては共感すべきところが多い。ブログの効用を強調する伊藤の論調と、地球人やスピリチュアリティを強調する小林正弥の論調を組み合わせれば、「地球人スピリット・ジャーナル」というブログを書いてきた当ブログにも、それなりの妥当性があった(はず)ということになる。
9)われわれは、コモンズを護ることによって、これらのツールの力を大衆が入手できるように護っていかなくてはならない。スペクトラムを開放して人々がそれを使えるようにする一方、知的財産への支配の増大や包括的でもオープンでもないアーキテクチャーの導入に抵抗しなくてはならない。
ツールとインフラをより安価で使いやすいものにして、より多くの人々にザ・ネットへのアクセスを提供するよう努めなくてはならない。p114伊藤穣一「創発民主制の可能性」
10)意味じくも小林正弥は「公共」の実現とそれに基づいた「公」の再建を目指す。という文章を書いている。仔細は超越するとして、ここで伊藤が「コモンズ」と言っていることと、小林が「公」と言っていることは、ますます興味深い。これは、ほぼ同じ意味であり、また当ブログとしては、これにさらにアントニオ・ネグリの「コモン」を重ねて読む進めてしまいたくなる。
11)小林正弥の論旨が高度な理想を語りながら、具体的な手段や提案を欠いているのに比べ、伊藤穣一はネット界のイノベーターとして具体的な方向論に長けながら、決して大盤振る舞いなリップサービスをしないところは注目に値する。
12)すくなくとも、ここまでの二冊を象徴的に読み下してみれば、当ブログが「地球人スピリット・ジャーナル」というブログを書いて、「オープンガバメント」開かれた政府への道を模索している姿は、決してドン・キホーテが風車に向かって突撃しているの同様、と卑下すべきでもないな、と胸をなでおろす。
つづくかも
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