「テクニウム」ーテクノロジーはどこへ向かうのか? ケヴィン・ケリー<7>
1)私は人生の大半、ほとんど物を所有することがなかった。大学を中退してほぼ10年間は、遠いアジアの地を安物のスニーカーとヨレヨレのジーンズで放浪しており、お金はなかったが時間はたっぷりあった。
私の一番知っている都市は中世の豊かさに満ちており、通り過ぎた田舎は古代からの農業の伝統に支配されていた。手にした物は、ほとんどが間違いなく木か繊維か石で作られていた。
私は手で物を食べ、自分の足で山や谷を旅行し、どこでも眠った。持ち物はほとんどなく、寝袋、着替えの服、ポケットナイフとちょっとしたカメラがすべてだった。
田舎に接して生きると、テクノロジーという蓋いを取り去ったときに開けてくる直接的な経験をすることができた。
頻繁により寒い思いをし、より暑い思いをし、何度もずぶ濡れになり、あっという間に虫に刺され、日々や季節のテンポにより速く同化した。時は潤沢だった。
8年間アジアに居てからアメリカに帰り、少ない持ち物を売り払って安い自転車を買い、アメリカ大陸を西から東へと5000マイルもあてもなく旅した。 p5「私の疑問」
2)ケヴィン・ケリー。この魅力的な人物の、その魅力の源泉は奈辺にあるのだろうか。1952年生まれということだから、学年では私より一つ上。スティーブ・ジョブズよりは2学年上といいうことになる。その時代の人物だ。
3)思えば、私もまた、高校生の16歳の秋休み、兄貴譲りのオンボロ自転車で佐渡に向かって旅を始めてから、おおよそ10年間は、ヒッチハイクで日本一周したり、インドやアジアにバックパッキンで旅をしていたのだから、時代背景としては、似ていなくもない。
4)それに、彼の「表現」が文章であったり、その発表メディアが「雑誌」だったり、自称するところの職業が「編集者」であったりするところに、一筋の共感を覚えてしまうのである。
5)本として書いてあることは、欧米のハードカバー本によくあり手の奴で、とにかく面倒なこと(つまりもう何度も何度も他の人々が語ったようなフレーズ)をまたまた読まされるので、ちょっと辟易する場合もある。
6)だとしても、あちこちにちりばめられた数々の貴重な体験談は、ひとつひとつ傾聴するに値する。欧米流のちょっと誇張された表現が気にならないわけではないが、これは文化の違いや、翻訳の上での小さな誤差として許容できる範囲である。
7)この本、最新の「<インターネット>の次に来るもの」 未来を決める12の法則」(2016/07 NHK出版) がかなり面白かったので、追っかけで読んだ一冊である。ついでにさらに「『複雑系』を超えて」(1999/02 アスキー出版)にも目を通す予定である。
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