「デジタル・ゴールド」ビットコイン、その知られざる物語 ナサニエル・ポッパー
「デジタル・ゴールド」ビットコイン、その知られざる物語
ナサニエル・ポッパー (著), 土方 奈美 (翻訳) 2016/09 日本経済新聞出版社 単行本(ソフトカバー): 480ページ
No.3832★★★★☆
1)読みだした時は、こりゃ今年一番の一冊だなぁ、という盛り上がりがあった。だがだんだん読み進め、後半になると、ずーと評価は冷めていった。最終地点では、まずまずの評価に落ち着いたが、これはいずれ再読する機会があれば、また大きく評価が変わる可能性がある。
2)一番の着目点は、最初のビットコインの立ち上がりの時に、サトシ・ナカモトの活動について、かなりの数のエピソードとして登場してくる点である。彼は現在においても謎の人物とされていて、逆にビットコインの神秘性を高める効果もあるが、また不透明性の象徴でもあるようだ。
3)彼の持ちビットコインの現在高は、おそらく100億ドルを超えていると評価されており、彼が身の上を明かすと、犯罪組織のターゲットにもなってしまうとも言われている。身を隠しているのは事実としても、初期において、一生懸命にその開発に努力していた数年の風景は、本書以外には読んだことがない。貴重な資料である。
4)インターネットの初期において、オープンソース(フリーソフトウェアとも)としてのリナックスが、フィンランドの学生リーナス・トーバルスの「それがぼくには楽しかったから」に活写されているように、サトシ・ナカモトもまた、ビットコインの象徴として取り上げられている。
5)本書は2009/01から2014/03までの風景が31章に分割して語られている。いかにも筆記者がその場にいたような、いわゆるアメリカ本のジャーナリズムにありがちな、ノンフィクションもどきの論調は、途中でなんとなく飽きがくる。小説やフィクションとまではいわないが、いわゆるメディアに登場する「事実」とは違っているだろう。
6)いくらニューヨーク・タイムズの記者が書いたという、アメリカ好みの論調ではあるが、どうも作られているように勘繰ることもできる。ここから漏れたもの、証言の裏付けがとれていないもの、筆記者サイドに引き寄せて理解したもの、さまざまな要素が絡みこんでくると思われる。
7)この本の残念なことは2014/03までで終わっていることであり、ぜひ続編を、今日、いまの時点で読んでみたい。それには、WIREDの最新号は貴重な資料となる。
8)WIRED VOL.25では、本書でも取り上げられている「シルクロード」の顛末も別建資料として付録がついている。
9)さて、この本を一読して、やっぱりマジョリティの私などはなかなか手を出せないのがビットコインの現状だなぁ、と思う。価値の乱高下もあるし、利便性という意味でも決して使い勝手がいいものとは思えない。
10)決算完了まで10分もかかるとか、大量の熱を発生させるというシステム的な欠点も目につくが、今のところビットコインは、もっとも仮想通貨として発展しそうな最有力候補だ。
11)まだまだ目が離せない。というか、ようやくそのリアルな実態が、視野に入り始めてきた。
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