「ぼくは深夜を解放する!」続もうひとつ別の広場<4> 桝井論平 & 冬崎流峰
「ぼくは深夜を解放する!」 続もうひとつ別の広場<4>
桝井論平 & 冬崎流峰1970/05 (株)ブロンズ社 単行本ハードカバー 180p カバー・扉装丁 戸井十月
★★★★★
1)深夜放送の熱気が最高潮に達していた1970年5月、「ぼくは深夜を解放する」というタイトルをつけた本を出させてもらいました。このタイトルには、もうあとへは引けないという当時のボクの、ある意味、切羽詰まった思いがこめられていたのですが、それにしてもちょっと大胆だったかな。「上をむいて話そう」桝井論平p143
2)いや、そんなことはないだろう。こうして今読み返してみて、見事にこの本のタイトルどおりのことが、30年も、40年もかけて起こり続けてきたのではないだろうか。土曜の夜の、というか日曜の朝の午前3時からの2時間という、まさに草木も眠る丑三つ時のラジオ放送は、それまでの日本人たちの意識の何かを解放してしまったのだ。
3)大局的に見れば、この「もうひとつ別の広場」は、サブカルチャーとして、カウンターカルチャーとして、長い間、人間界の眠りこけていた意識の暗部を揺さぶり起こしてしまったのだ。この文化が、やがて、若い世代のパソコンカルチャーなどとともに、現在のインターネットカルチャーを作り上げてきたのだ。そう思えば、当時の深夜の雄たけびは、ひとつの宣言でもあったのである。
4)当時は70年安保闘争や各地の公害問題、成田空港反対を叫ぶ三里塚の農民闘争、そしてベトナム反戦と、まさに激動の時代。ボクは僕らを取り巻く様々な問題から、決して目をそらさずに、さあ、共に語り合おうとよびかけ続けたのです。でも、もう今は版元のブロンズ社もないし、「本」も絶版です。あーあ。「上をむいて話そう」桝井論平p144
5)当時の本が残っていることは確かにまれだが、でもこの本は私にとっては身近な図書館の蔵書でもあるし、国会図書館から取り寄せて読むこともできる。現在の図書館システムはかなり進歩しているので、全国どこの図書館からでも、おそらく取り寄せてこの本を読むことができるはずだ。しかも、国会図書館には、1970年版、1975年版、1979年版が、それぞれ蔵書されている。初版後もずっと増刷されつづけていたことが分かる。
6)冬崎流峰クンは今でも長い付き合いを続けている友だちの一人です。彼は東北大学に進んで、仙台で仲間たちと「雀の森」といいうファミリーなコミューンを作って共同生活をしたり、、まぁ、行動力の塊のような友だちです。「上をむいて話そう」桝井論平p141
7)この本が出た当時、私が最初に流峰に出合ったのは、東北大学川内キャンパスの中庭で行われた学生集会の時だった。どこかにすでに書いておいたはずだが、彼はべ平連の隊列の中でも際立って目立っていた(と、私の目に映った)。
9)1969年10月3日
三木清「哲学ノート」-人間主義という項目のところで、”私は人間である。人間的なものの、何一つとして、私に無関係であるとは思わない。”という言葉がでてきた。今から二千年以上も前に、テレンティウスという人がいっている。思想史の上からは、ごく常識的な言葉かもしれないがぼくは知らなかった。
同じところに、立ちたいと思う。
このことは、ひとつの覚悟である。基点はここだ。
三木清はいう。”新しい人間は、古い桎梏から、人間性を歪曲するものから、自己を解放することによって生れねばならない。かくして、ヒューマニズムは、解放の精神であり、多かれ少なかれ、反抗的精神を含んでいる。”
人間そのもの、自立した存在を追及して行けば、今ある自分を規定する、様々な条件が、あまりにも形式主義に陥っており、その形式が、息苦しい桎梏となって、自分自身をがんじがらめにしてしまっていることに、気づかないわけにはいかない。
社会に「所属」するという行為が、それらの形式を招きよせる結果になっている。ぼくは、社会的に、様々に規定された人間ではあるけれど、さらに、それらの規定を超えて、人間である。ぼくを規定する形式は、ぼくが生きる手段としてあるのであって、生きることそのものを規定するものではない。ぼくの社会観、世界観は、すべて、ここから出発する。
ぼくは、人間であること、生きることに対する攻撃に対しては、徹底して反抗する。「ぼくは深夜を解放する」桝井論平p161
10)この人間解放というキーワードこそ、雀の森の基調路線であったし、私は私で、そののちにOSHOのゲイトレス・ゲイトをくぐり、道なき道を歩き始めたのだった。
つづく
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