「地球人スピリット・ジャーナル」エッセンス版<3>
「把不住述懐」<3>科学
1)2006年から2016年までの十年間の読書の中で、記憶に強く残っている科学のテーマとしてはシンギュラリティがある。当ブログとしては「シンギュラリティ」、「シンギュラリタリアン」という二つのカテゴリを作って、それなりに探索してみた。
2)もちろん、その語源は「ポスト・ヒューマン誕生」(2007/1 NHK出版)のレイ・カーツワイルにある。この邦題が悪かったのか、当時はほとんどヒットすることなく沈静していたコンセプトだったが、版元のNHK出版が、タイトルも新たに「シンギュラリティは近い」---人類が生命を超越するとき---としてエッセンス版を出したのは2016/04になってからであった。
3)2017年初頭の現在、このシンギュラリティは最前線の流行語であるようにさえ思える。そもそもがかなり分厚い一冊なので、エッセンス版とは言えかなり重厚な内容である。左脳が必ずしも聡明ならず、理科系の論理性にも乏しい当ブログとしては、ほとんどちんぷんかんぷんであるが、最後にカーツワイルが到達した地平は興味深い。
4)シンギュラリティは最終的に宇宙を魂で満たす、と言うこともできる 「シンギュラリティは近い」p244 同上
5)反面、そのシンギュラリティのシンボル的存在となるのが、ヒト型ロボットの登場である。いずれ人工知能をそなえたコンパニオンとしてのロボットが私たちの生活に入り込んでくるのは間違いないが、そのことを先駆的に考察したのが、「未来のアトム」(田中伸和 2001/7 アスキー)である。
6)鉄腕アトムが誕生したと言われる2003/4/7に向けて書かれた膨大な一冊であるが、人工知能が心を持つには身体が必要とされる、と言う点からヒト型ロボットの登場を予感するが、それでもなお、科学が意識を超越することはない、と喝破している。
7)SF小説が好んで主題に取り上げるようには、ヒューマノイドに簡単に「意識」や「心」が発生することはありえないことは確実であるように私には思える。
このことは、逆にいうと、私たち人間が、誰しも、実に驚嘆すべき能力を宿しているということである。私たちは、自分たちが宿している驚嘆すべき能力について、あまりにも無知なのである。「未来のアトム」 p600
8)当代の科学者としては名前を馳せた茂木健一郎には「意識とはなにか」(2003/10 筑摩書房)がある。当ブログも呼応する形で、そのブック・ガイドをナビゲーションとして、関連書籍を読み進めてみたが、結論としては芳しいものではなかった。
9)3・11震災のあと慰問のために来日したダライ・ラマに対して茂木は質問をしている。
10) 「実はわれわれ脳科学者はとても大きな問題を抱えています。それは『意識』の問題です。科学者はこれを全然解明できていないんです。・・・」茂木健一郎「傷ついた日本人へ」 (ダライ・ラマ14世 2012/04 新潮社)p129
11)対するダライ・ラマの回答は・・・。
12) 意識はこうして前世から現世へ、そして現世から来世へ、連続して持続すると考えられています。意識は何かから生み出されたわけでも、突然消滅するわけでもなく、始まりも終わりもなく、常に存在し引き継がれるものなのです。ダライ・ラマ14世「傷ついた日本人へ」 ( 2012/04) p134 同上
13)ここで会話が成立しているかどうかは微妙なところである。そもそも意識は「~~とは何か」と問われるものではなさそうだ。科学という強大なパワーの限界点はこのあたりにある。
14)さまざまに理解され脚色されるアーサー・C・クラーク「2001年宇宙の旅」だが、しばがきけんじ脚色でFM東京1978-06に放送されたの第5話(15分以降)ではは、次のように表現されている。
15)「何もなく、ただ何もないということを意識している意識だけがある。そして打ち消すことができない意識という現象こそ、自分の、あらゆる人々の、全生命の、宇宙の本質なのだ。宇宙はなにひとつ隠してはいなかった。われわれが必死になって目をつむっていただけだった。」第5話15分以降
16)それから彼は、考えを整理し、まだ試していない力について黙想しながら、待った。世界はむろん意のままだが、つぎに何をすればよいかわからないのだった。
だが、そのうち思いつくだろう。アーサー・C・クラーク「2001年宇宙の旅」(1977/05 早坂書房)p264
17)この小説はこのように結句されている。つまり人間存在の可能性は無限である。そして、なにをするのか、どう生きるのは全く自由なのである。
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