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2017/02/06

「2010年宇宙の旅」アーサー・C.クラーク

2010

「2010年宇宙の旅」
アーサー・C.クラーク (著),    伊藤 典夫 (翻訳)  1984/05 早川書房 単行本(ハードカバー)  375ページ
No.3877

1)もう何度も映画では見てきたシリーズだが、今回は小説に挑戦中。何気にふと、この表紙を見たところ、すでに、ここには大きくテーマが提起されている。

2)まずは宇宙船としてのオデッセイであり、スターチャイルドとしての胎児であり、そして問題の浮遊するモノリスである。

3)宇宙船オデッセイ(あるいは他の宇宙船も含め)は、コンピュータHAL9000の象徴であり、またその身体化とみなすこともできる。あるいは2017年現在の言葉で言えば人工知能であろう。

4)スターチャイルドは、人間そのものの象徴であり、地球人全体、あるいは胎児を強調することによって、転生輪廻を肯定するかのような生命全体の進化そのものの象徴でもある。

5)さらには、ここでは物質化はされているが、1:4:9の比率を持つ黒い物体モノリスは、知性というよりもっと拡大した領域、意識そのもの象徴としてみることが可能であろう。

6)つまり当ブログの流れで言えば、コンテナ、コンテンツ、コンシャスネス、あるいは科学、芸術、意識で言えば、宇宙船は科学でありコンピュータであり、スターチャイルドは未知性を含んだ人間そのものの可能性であり、モノリスは、不可知なるものの神秘を漂わす意識そのもの、ということができるであろう。

7)引き寄せてもっと言い直せば、シンギュラリティに向かっての人工知能であるし、グローバル意識をもった地球人としての生命体であるし、マインドフルネスとして語り始められた瞑想への道、ということができる。

8)そういう目でみることが出来れば、2010年の続編である「2061年宇宙の旅」の表紙は、さらに進化している。

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9)ここに書かれているのは、宇宙船乗組員としてのスターチャイルド、あるいは地球人そのものとしての「私」であるし、背後に立つモノリスはすでに多数化乱立しており、しかも、そこに潜むのは、人工知能HAL9000の象徴でもある赤い魚眼レンズである。しかも、もっと象徴しているのは、この三つ、HAL、人間、モノリスが、さも一体化しつつあるような暗示である。

10)そして、さらに続編であり、また完結編とも思える「3001年終局への旅」においては、たったひとつのモノリスとして描かれている。

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11)見事なプロセスであり、小説としては、これでいいのだと思う。あるいはこれしかないでしょう、というストーリーを描いているのではないか。

12)すでに還暦を過ぎた私は3001年どころか2061年までさえ生き延びていることは想定できない。平均寿命で言えばあと十数年、2045年とか言われる特異点シンギュラリティにさえすでに手の届かない位置に属している。

13)いえいえ、科学技術の進歩は早い、100年、200年の寿命さえ持ち得るかもしれないし、あるいは、医学的に見ても、あと数年、あと数日、あるいはこの瞬間にさえ、私の生命は終わる可能性は十分にあり得るのだ。

14)しかし、この小説がなんであれ、完成度うんぬんとか、ストーリーがどうであるとか、味わい尽くす前に、この小説が暗示しているもの、挑戦しているもの、表現して共感を得ているものは、別段に年代を追わなくても、小説に頼らなくても、すでに達成、完成は可能なのだ、と直感する。

15)不可知なる意識を、未知なるSFとして表現し続けた、そして人工知能や宇宙探索に先鞭をつけ続け啓発し続けてきた著者、アーサー・C・クラーク卿にあらためて敬意を表し、乾杯したい。

つづく

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