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2017/02/22

プレムバヴェシュの孫たちとの対話 <65>バカ

<64>からつづく

1)わがマスターの教えのひとつは、感情を抑圧しないことにある(と理解している)。みんな和やかに平和に生きることは基本である。だが、みんなで悟りすまして静かに暮らすことは、逆に一つの抑圧になりかねない(と聞いたような気がする)。

2)時には、わが家でも感情のもつれが発生する。互いに修復可能な範囲ではあるものの、限界を超えそうになる時がある。宗教的修行が進んだような人であれば、そこはぐっと抑えるのかもしれないが、わが夫婦の間では、数年に一度ではあるが、その限界が超えていくことがある。

3)さもない痴話喧嘩である。でも、今回はちょっとまずかったかな。

4)若夫婦は所用ででかけ、孫二人を私達老夫婦が預かっていた。私にとって何事か気にくわないことがあって、焼酎の力も借りて口火を切った。

5)普段はまずまずの受け答えをして、適当に呆け役を引き受ける女房殿であるが、今夜の抵抗力は大きい。

6)最初は抵抗の意を示すのであるが、次第に黙りこくる。私は、もちろん手は出さないが、普段ちょっとは我慢している小言のひとつやふたつ、みっつや四つ、あるいは延々と強い口調で飛び出すことになる。

7)それを5歳と2歳半の孫たちが、眺めている。最初は何事が起きたのか、と唖然としているが、どうも彼らの眼には、ジジイが一方的に、バーさんに荒い言葉を投げかけているように見えるようだ。

8)そしてここからが問題なのだが、話題の本質はよくわかっていないようだが、私の強い言葉の中に、「バカ」という言葉が含まれていることに留意する。

9)二人は、この「異常」な状態を見つめていて、最初はあっけにとられたものの、これは修復させなければならない、と思ったらしい。内容の解決など、まぁ、どうでもいい。

10)二人の孫たちは、ジジイに駆け寄ってくる。目にはバァさんは入っていないのではなかろうか。

11)「おじいちゃん、バカっていう人は、もっとバカなんだよ」

12)焼酎の勢いを借りて言葉を投げつけているとはいうものの、言うだけ言えば、そうそうエネルギーは長続きするものではない。そろそろこんなもんかな、というタイミングで、孫たちの言葉が挟まれる。

13)「おじいちゃん、バカっていう人は、もっとバカなんだよ」

14)そうかな、と思う。こんな言葉、二歳半の子供がどこから覚えてくるのだろうか。テレビかな。公園かな。新しい言葉を覚えつつ、母親からたしなめられて、いつもこういう風に言われているのかもしれない。今日は、自分たちが言われている言葉を、ジイさんに言ってみたのだ。

15)ほどなくジイさんのエネルギーも枯渇し、孫たちもトミカやブロックに帰っていく。ジイさんは場が持たないので、自室に戻り、雑誌を読むふりなどをしながら布団にもぐり、いつの間にか夢の中。

16)エネルギー爆弾の破裂のあとは、そうそう簡単に修復はしない。一週間ほどは、なんとなく老夫婦間の視線は合わない。言葉も少ないが、洗濯機がどうしたとか、今日はなんのゴミの日だとか、必要な言葉は交わさざるを得ない。

17)いつのものことではあるが、こうして、見慣れた風景に戻っていくのである。

18)しかしまぁ、背負うた子に道を教わる、ということはあるが、今や、私は、背負うた孫に道を教わる時節となったのである。

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