プレムバヴェシュの孫たちとの対話 <65>バカ
1)わがマスターの教えのひとつは、感情を抑圧しないことにある(と理解している)。みんな和やかに平和に生きることは基本である。だが、みんなで悟りすまして静かに暮らすことは、逆に一つの抑圧になりかねない(と聞いたような気がする)。
2)時には、わが家でも感情のもつれが発生する。互いに修復可能な範囲ではあるものの、限界を超えそうになる時がある。宗教的修行が進んだような人であれば、そこはぐっと抑えるのかもしれないが、わが夫婦の間では、数年に一度ではあるが、その限界が超えていくことがある。
3)さもない痴話喧嘩である。でも、今回はちょっとまずかったかな。
4)若夫婦は所用ででかけ、孫二人を私達老夫婦が預かっていた。私にとって何事か気にくわないことがあって、焼酎の力も借りて口火を切った。
5)普段はまずまずの受け答えをして、適当に呆け役を引き受ける女房殿であるが、今夜の抵抗力は大きい。
6)最初は抵抗の意を示すのであるが、次第に黙りこくる。私は、もちろん手は出さないが、普段ちょっとは我慢している小言のひとつやふたつ、みっつや四つ、あるいは延々と強い口調で飛び出すことになる。
7)それを5歳と2歳半の孫たちが、眺めている。最初は何事が起きたのか、と唖然としているが、どうも彼らの眼には、ジジイが一方的に、バーさんに荒い言葉を投げかけているように見えるようだ。
8)そしてここからが問題なのだが、話題の本質はよくわかっていないようだが、私の強い言葉の中に、「バカ」という言葉が含まれていることに留意する。
9)二人は、この「異常」な状態を見つめていて、最初はあっけにとられたものの、これは修復させなければならない、と思ったらしい。内容の解決など、まぁ、どうでもいい。
10)二人の孫たちは、ジジイに駆け寄ってくる。目にはバァさんは入っていないのではなかろうか。
11)「おじいちゃん、バカっていう人は、もっとバカなんだよ」
12)焼酎の勢いを借りて言葉を投げつけているとはいうものの、言うだけ言えば、そうそうエネルギーは長続きするものではない。そろそろこんなもんかな、というタイミングで、孫たちの言葉が挟まれる。
13)「おじいちゃん、バカっていう人は、もっとバカなんだよ」
14)そうかな、と思う。こんな言葉、二歳半の子供がどこから覚えてくるのだろうか。テレビかな。公園かな。新しい言葉を覚えつつ、母親からたしなめられて、いつもこういう風に言われているのかもしれない。今日は、自分たちが言われている言葉を、ジイさんに言ってみたのだ。
15)ほどなくジイさんのエネルギーも枯渇し、孫たちもトミカやブロックに帰っていく。ジイさんは場が持たないので、自室に戻り、雑誌を読むふりなどをしながら布団にもぐり、いつの間にか夢の中。
16)エネルギー爆弾の破裂のあとは、そうそう簡単に修復はしない。一週間ほどは、なんとなく老夫婦間の視線は合わない。言葉も少ないが、洗濯機がどうしたとか、今日はなんのゴミの日だとか、必要な言葉は交わさざるを得ない。
17)いつのものことではあるが、こうして、見慣れた風景に戻っていくのである。
18)しかしまぁ、背負うた子に道を教わる、ということはあるが、今や、私は、背負うた孫に道を教わる時節となったのである。
| 固定リンク
「07)現代世界におけるマインドフルネス2」カテゴリの記事
- OSHO 現代世界のマインドフルネス 「Mindfulness in the Modern World」 <218>ちょっと聞いてみなさい(2017.03.31)
- OSHO 現代世界のマインドフルネス 「Mindfulness in the Modern World」 <217>Eat and Drink Consciously(2017.03.31)
- 「祈り」山尾 三省 <10> / 「日本会議の研究」菅野 完<4>(2017.03.30)
- 「シンギュラリティは怖くない」ちょっと落ちついて人工知能について考えよう 中西 崇文 / 「シンギュラリティ」人工知能から超知能へ<2> / 「<インターネット>の次に来るもの」 未来を決める12の法則<20> / 「WIRED」 VOL.27<2>(2017.03.30)
- 再読したいこのカテゴリこの3冊「現代世界におけるマインドフルネス2」編(2017.03.31)
コメント