「月と蛇と縄文人」シンボリズムとレトリックで読み解く神話的世界観 大島 直行<3>
「月と蛇と縄文人」 シンボリズムとレトリックで読み解く神話的世界観<3>
大島 直行 (著) 2014/01 寿郎社 単行本: 280ページ
★★★★☆
1)著者は1950年、北海道生まれの方。北海道考古学会会長、日本考古学協会理事、日本人類学会評議員などを歴任された方、という。一般にはアカデミズムの大道を歩まれてきたのだろうが、この本の成り立ちを考えると、そのオーソリティを離れて、今や、一個人として、これまでの感触を一気に吐露している、という風に見える。
2)フロイト、ユング、エリアーデ、レビィ=ストロース、あるいは中沢新一といった、当代の各界の権威を持ち出しては、統合的な「人間学」に迫ろうとする。
3)縄文人の精神性をないがしろにして、なぜ考古学は物質的・技術的な研究しかしてこなかったのでしょう。理由は簡単です。縄文土器や土偶、お墓や竪穴の様式に込められた縄文人の精神性(神話的思考)を読み解くための方法を、考古学という学問は持っていなかったからです。
そしてそれはいまだに持ちえていません。なぜでしょう。その方法を考古学が得るためには、ほかの学問に助を求めなくてはならないからです。考古学者はそれを避けてきました。p6「はじめに」
4)学者や政治家や組織人など、退職したあとにあれこれ「本音」を言うぞ、という人がいるが、本来であれば、「現役」のときに自ら勝ち得た「真実」を述べるべきなのであり、当ブログにとって、「後日談」は三文安い。
5)レトリックには、いくつもの表現形があることが知られていますが、縄文人が主に使ったのは、「誇張法」と「隠喩法」だと私は思います。あるいはもうひとつ「擬人法」を使っている可能性もあります。p41「縄文人のものの考え方」
7)ざっくり言って、縄文人という規定は、あまりにも大雑把すぎるのではないか。少なくとも自らを縄文人と名乗った人間はおらず、俺たちは縄文人だ、と連帯した形跡もない。すくなくとも、誇張法と隠喩法と擬人法に頼り切っているのは、著者自身なのではないだろうか。
8)わがガレージ・オフィスにおいてある、わが廃物アートの、縄文土偶と、薬師瑠璃光如来坐像を並べてみる。実は、この落差にずっと逡巡しているのが、この数年の当ブログである。もちろん、縄文土偶は縄文人のシンボルを凝縮したものと考え、薬師如来は、日本に伝来した大乗仏教のシンボルと考える。
9)日本における記紀神話以前の時間的経緯をはてどこに求めるか。形としては縄文土偶や土器や竪穴式住居だとして、言葉としては「ホツマツタエ」に見つけることができるか、としてきたのが、この数年の当ブログである。しかし、それは、ほとんど、挫折しているといえる。
10)あるいは、大乗仏典のシンボルを、卑近な類推から薬師如来の中にみようとしているのだが、仏像にしろ、蓮の華や、瑠璃(ラピスラズリ)、オーラ(後光)などのシンボリズムの定式化のなかに固定されたイメージを見ようとする。
11)「月と蛇と縄文人」。まだ40頁ほどしか目を通していないが、なかなか面白そうだ。面白そうだから、まずは最初に茶々を入れておく。そもそも、今日を生きる現代人において「その「人間学」とはいかにあるべきなのか。
12)考古学的に、どのような新しい発掘や意味づけが展開されようと、2500年の法輪の速度が止まってしまっている今、新しい時代は、新しい「人間学」で再スタートされるべきなのだ。
13)いみじくも当ブログは現在「現代社会のマインドフルネス」というカテゴリで進行している。縄文も、蛇も、月も、あるいは仏像、神社、仏閣、寺院、経典、その他、古きものが、そのまま、現代人にとって役に立つ、ということではなくなってきている。
14)技法としての瞑想も、また、ネーミングとして、マインドフルネスという呼称がふさわしいなら、そのような新しい呼び名を活用して、新しい意味を付与すべき時代となっている。あるいは、当ブログはそうしていこうと思っている。
15)表紙のデザインと、そのタイトルに惹かれてめくり始めた本書であるが、はてさて、最後まで読み切った場合、その感想はどうなるであろうか。今から、我ながら、興味深いものである。
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