「ケルアックに学べ」 「オン・ザ・ロード」を読み解く6つのレッスン ジョン・リーランド / / 「ホワイトアルバム」転生魂多火手伝<12>
「ケルアックに学べ」 「オン・ザ・ロード」を読み解く6つのレッスン
ジョン・リーランド (著) 今井栄一 (翻訳) 2008/07 出版社: スペースシャワーネットワーク (P‐Vine Books) 単行本: 224ページ
No.3921★★★★☆
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<11>からつづく
「ホワイトアルバム」 転生魂多火手伝
<12>セブンス・アベニュー 目次
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1)今更、ケルアックに学べと言われても、一体何を学ぶのか。原書のタイトルは「Why Kerouac Matters」。なんでケルアックが問題なんだよ、てなニュアンスじゃぁないのかい。
2)原題には括弧にくくられたもう一つのサブタイトルがあるが、そこにはこう記されている、「They're Not What You Think」、つまり「彼らは君が思っているような連中じゃないよ」という訳文になる。
作者はこう言いたいのだ。「ケルアックは君が夢見ているような人間じゃないし、オン・ザ・ロードは自由な旅人の聖書なんかじゃちっともないんだぜ」 かなり大胆不敵、あたしい提案ではないか。p275今村栄一「訳者あとがき」
3)まるでジェームス・ディーンを意識したようなカバー写真だが、たしかに今更ケルアックに心酔してもしょうがないよな。で、ちょっと気づいてジェームス・ディーンをググってみたら、なんと、彼の人生は1931/02/08から始まって、1955/09/30に終わる。なんと、むしろこちらのほうがDの人生の時代背景にぴったりではないか。しかも自動車事故で死亡しているのも共通だ。後日、こちらも追っかけてみようかな。
4)ジェームズ・ディーンが乗っていたシルバーのポルシェ・スパイダー550とはこんな車だったという。
5)そして事故後は、こんなんなっちゃったらしい。
6)さて、こちらの一冊の本文に戻ろう。6つのテーマがある、ということだが、よくわからない。目次を見ると、こうなる。
01.女の子たちの夢とその他のすべて
02.気狂い連中のパラダイス
03.世界の真実はフランス映画にある--愛とセックスの寓話
04.スコット・フィッツジェラルドラルドみたいには遊ばない--ジャズの寓話
05.サルのヴィジョン--黙示録
06.影響--成功と不満
7)あえて言うなら、01の青春譚はもういいかな、と思う。02の若者の彷徨ももういいなぁ。せつなすぎる。05のなんとなく悟りへの道も、もういいかなぁ。06の包括的な部分も、実はケルアック追跡に当ブログの目的があるわけじゃないので、割愛できる。あえて、いうなら、03の部分のフランスとのつながりと、04のジャズの部分だ。
8)ただ、当ブログにとって、フランス流の恋愛譚もあまりお呼びじゃない。むしろ同性愛的なボーイズラブ、あるいはもっと純化された、男同士の友情的なニュアンスに近い。また、ジャズも、ケルアックとりフォード・ブラウンの距離も縮まらない限り、ここは深入りは禁物だぞ。
9)正直言って、ペラペラめくるかぎり、この本は「面白い」。その面白さは、私からみた場合の村上春樹に似ている。あえて私は村上春樹なんぞ読む必要はない。影響を受けたこともなければ、読まなくて損したとも思わない。こんな文学、なくてもいい、と思う。
10)だけど、村上春樹は、Dの今世を他者と共有しようとした場合、役に立つ。誰も自分の人生など同時に歩めるひとなどいない。自分の人生は自分の人生なのだ。自分しかわからない。だけど、それを共有しようとした場合、サンプルとしての村上春樹文学は共通話題として使いやすい。あの時代、自分はここにいて、あなたはここにいたんだな。そんな使い方ができる。ポピュラーな大衆文学とは、そういう役割があるのだろう。
11)ケルアックもその要素がある。彼から学ぶべきことなど、ちっともない。学ぼうとして読んだりはしない。だけど、これだけ人々の話題にのぼるなら、他者とつながろうとするなら、ここを切り口につながっていきやすい。それが大衆文学なのだ。
12)だれも、小説のなかの登場人物なんかじゃない。だけど、共通のキーワードとして、ひとつの基準点として、ケルアック文学があっていいのだろう、という認識になってきた。そこんとこが「面白い」。
13)この本でもそうだが、最近ちょっと気になっているのが、セブンス・アベニュー、という言葉。
14)初めてのオン・ザ・ロードの旅へ出るために、サルは、地下鉄のセブンス・アベニュー・ラインに乗って、ブロンクスの242丁目ストーリート駅まで行った。p32「びしょ濡れのヒッチハイカーの寓話」
15)びしょ濡れのヒッチハイカー、なんてエピソードは自分自身のものを持っているので、他の人の「寓話」など必要ない。だが、なんでか知らないが、セブンス・アベニュー、という言葉がやたらと響く、なんでだろう。
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