『ウェブ進化論』 本当の大変化はこれから始まる 梅田望夫<47>
「ウェブ進化論」 本当の大変化はこれから始まる<47>
梅田望夫 2006/02 筑摩書房 新書 249p
★★★★☆
1)現在36歳。離婚話を契機に山の中で一人暮らしを始めた画家。それまでの蓄えで食べているが、画業では安定せず、街に降りて、週何回かの絵画教室で指導する。仮にこのような男性が2017年の現在、あるいは2010年頃に存在したとして、この男性が、インターネットに関心もなく、ケータイも持っていない、ということはあり得るだろうか。
2)村上春樹の最新作「騎士団長殺し」(2017/02 新潮社)に振り回されて、せっかくのゴールデンウィークの長い休みを棒に振ってしまった腹いせに(爆笑)、この文庫本に手が伸びた。
3)当ブログの三題噺には、コンテナ、コンテンツ、コンシャスネス、という三コン論というものが存在した。この小説は、コンテンツ、あるいはコンシャスネスに特化していて、ほとんどコンテナ論を無視している。そこが一読者としての私が強く違和感を感じた部分であった。
4)「ウェブ進化論」は、当ブログが拠って立つ礎のひとつとなってくれている本である。アルビン・トフラーの「第三の波」(1980/10 日本放送協会出版局)と、「<インターネット>の次に来るもの」(2016/07 NHK出版)の間にあって、極めて重要な位置を占めている一冊である。
5)11年前に出たこの本、今読んでみても、総論としてはうなづけるところが多い。まさに衆目が注視する中で登場した一冊だったと言える。著者の梅田望夫は、そのあと杳として存在を消してしまったが、いまだにあの衝撃の中で、当ブログは続いていると言っても過言ではない。
6)もちろん各論的にはすでに11年の間にさまざまなことが違った方向に動き出している。そもそもが3・11という大災害が読み込まれていなかったし、原発の動向、オバマという黒人大統領の出現と退場、そしてトランプという次なる出演者。スマホについても、ほとんどこの本には書かれていない。だが、日本の家電業界の集落は、すでにこの本で預言済みであったと言える。
7)モンスター・サイエンスといえば、大型ジェット機コンコルドを思い出す。確かに高速で飛ぶジェット機は制作できるが、市場からは消えていった。原発も、いずれはモンスター・サイエンスの最たる代表として、人類史のワースト欄を飾ることになろう。
8)ネット社会も、スマホの登場で、ある種の一局面に到達しているように見える。大型コンピューターから小型卓上型パソコン、そして今やポケットの中のスマホの時代である。その性能たるや、かつての大型コンピュータを凌駕する。ただ、これ以上のものが必要とされるのかどうかは微妙な時代になってきた。
9)この本でも取り上げられているグーグルもかつては情報中心の経営だったが、いまや自動運転という技術、あるい「モノ」づくりに走り始めている。このままいくと、日本の家電業界のみならず、自動車業界もすっぽり持っていかれてしまうこともありうる。
10)そして、おなじ兆候としては、いわゆるマンドフルネスとやらの流行の兆しがあることである。昔から言われてきたことでもあるし、この「ウェブ進化論」と対になっていた「ウェブ人間論」(2006/12/15 新潮新書)でも議論されていることではあるが、コンシャスネスの部分がどうしても必要となる。
11)レイ・カーツワイル「シンギュラリティは近い」(エッセンス版 2016/04 NHK出版)もまた、ある意味においては、このコンテナ、コンテンツ、コンシャスネスの三コン論に、大いに示唆をあたえている一冊である。
12)いずれにせよだ。「騎士団長殺し」のように、コンテナ論を排除して、いきなりコンテンツ論から、コンシャスネス論に入ろうとするのは、ちょっと以上に無理があるだろう。もうすこしマトモなバランスが必要だ。科学的な構想もしっかり基礎として重要視すべきである。
| 固定リンク
「06)現代世界におけるマインドフルネス3」カテゴリの記事
- 「アイアンマン2」ジョン・ファヴロー監督:(2017.05.21)
- 「アイアンマン」ジョン・ファヴロー監督:(2017.05.21)
- 再読したいこのカテゴリこの3冊「現代世界におけるマインドフルネス3」編(2017.05.21)
- 地球人スピリット・ジャーナル・ダイジェスト版<67>「現代世界におけるマインドフルネス3」カテゴリについて(2017.05.21)
- 「マイノリティ・リポート」トム・クルーズ他(2017.05.19)
コメント