「さとりサマーディにて」<28>ご不満
<28>ご不満 目次
1)さとりさんに、またひ孫がひとり生まれた。今度は男の子だ。おそらく、見渡したところ、この子が最後のひ孫になるかもなぁ。
2)家族や親せき、その周りの縁者たちの誕生日を記憶して、すぐ出すことが得意だった、別名さとりコンピュータも、実は最近、バグが目立ち始めている。ひ孫どころか、孫の名前が出てこない。誕生日ではなく、名前そのものが出てこなくなりつつあるのだ。
3)どうかすると、自分の子どもの名前だって、耳が遠くなったせいもあるが、聞き返すことがある。その人、誰だっけ。
4)長期に滞在する施設としては三つ目の施設に引っ越したが、どの施設でも、長短ある。いろいろな条件にマッチするのはなかなか大変だ。特に病気ではないのだから、病院にいることができない。リハビリと称する整体も、お休みになってしまった。
5)そのことがご不満なご婦人のために、わが友人が遠いところ、直接出向いてくれることとなった。何度か通っているうちに、よくなってくれればいいなぁ。
6)年齢が年齢だけに、大幅な改善はあまり期待できないそうだが、それでも、彼女の希望どおり、体をさすってやることすら、整体の心得のない家族にはなかなかうまくできない。やはりここは、経験と技術のある専門家にお願いするしかない。
7)食事やらサービスやら、自らの体調やら、なにかかにかの不調がでてくる毎日だが、家族としては、とくに私としては、とにかく60点合格主義の介護で、なんとか日々を送ることとする。
8)見晴らしもよく、日当たりも、風通しもよい部屋に逗留していながら、ほぼ失明している彼女の目には、この眺めは見ることができないのだ。
9)たまに車いすで玄関までいくが、外気が強すぎる時もあるみたいだ。デリケートに、真綿に包まれている、彼女であるのだが・・・。
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