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2017/11/05

「把不住述懐」地球人スピリットジャーナル・エッセンス版<14>秘密の部屋

<13>からつづく

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「把不住述懐」

<14>秘密の部屋   目次

 

 私はいつの頃からか、茅葺の屋根の家に住んでいる。割と大き目で二階もある。普通はここまでは知られてはいるが、実は三階もあるのだ。しかも上階に行く従って部屋数が増える。三階に至っては、一階の三倍もの部屋数と広さがある。というのも、本当は違法なのだろうが、隣の家の屋根裏までつなげてしまっているからだ。もちろん隣人も、家族もそのことに気づいていない。ほとんどそれは私だけの秘密なのだ。

 ほとんどというのは実は近所に住んでいる仲の悪い兄弟だけはどうやらそのことに感ずいているらしいからだ。知っていても知らんフリをしている。いかにも彼らしい、意地汚い性格だ。兄弟は広い土地を持ち、大きな家に住んでいるにもかかわらず、いつも家を建てては潰し、引っ越しばかりしている。もう何軒目だろうか。新しい家を作ったからと言って、決して立派でも、便利でもない。金ばかりつぎ込んで、無駄遣いばかりしているようにしか、私には見えない。いやな性格だ。

 だからその兄弟に批判的な私は、古い家に長く住んでいる。屋根の茅葺などは長い間葺き替えた事などなく、部分的に腐りかけている。雨漏りがして部屋もずぶずぶして快適とは言えないが、今すぐ崩れてしまいそうでもない。というのも私が住み始めた時もそうだったし、最近になって急にひどくなった、というわけでもない。とにかく三階とはそういうものであって、それ以上でもそれ以下でもない。広い畳敷きの広い部屋がいくつも続いていて、家具はほとんどない。雨戸もしまったままだ。雨戸は開いたことがない。そもそも開くようにはできていない。だから、誰も気づかない。

 ところで秘密はこれだけではない。二階と三階の間の北側に廊下が続いていて、ちょうど空中に浮かんだような離れがあるのだ。ここは見晴らしがいい。陽当たりがいいので、この部屋に入ってくるなり、昼寝をしたくなる。いや、この部屋は、むしろ昼寝専用部屋と言ってもいい。小さいと言っても、十六畳ほどはあるのだが、ほとんどガラス部屋なので、とにかく気持ちがいい。こんなに屋敷の角の道端の中空に浮かんでいるのに、今まで誰にも見つけられたことがない、というのも不思議だ。不思議だが、そこはあまり深く考えていない。とにかくそういうものと割り切ってから、随分時間が経つ。

 そしてもう一つ、といってもこれで終わりなのだが、もう一つある。それは部屋とは呼べない、まあ空間と言ってよかろう、ちょっとした梯子階段の上に、空間がある。一階の一番西の部屋の床の間に仕組んである秘密の扉から登ってくるのだ。作りが雑なのは私が時間を見つけてコツコツ作ってきたからで、全くお恥ずかしい作りだ。でも、それでいいのだ。誰を招待するわけでもなく、むしろ撹乱して、その存在を隠す意味では、むしろ雑であったほうが、むしろ好都合だ。梯子を登っていくと、高さは四階くらいの位置になるだろう。窓はない。私は何をしても自由だ。とにかくやりたいことをやる。

 ところが、割と最近のことだが、どうやらあの仲の悪い兄弟が、どうやらこの部屋の存在に気づいたのではないか、と私は疑い始めている。この前からだが、この部屋に通ずる通路が釘付けされてしまって、開かなくなった。しかも張り紙までしてある。「当面、この通路、使用禁止」。兄弟はどこまで知っているのだろう。この通路を作ったのはこの私である、ということまで感ずいているだろうか。あるいはそれを知っていて、他の家族に注意を喚起しているのだろうか。だとしたら、この秘密の空間をいぶかっているのは、兄弟ばかりではなく、家族の中の誰かも、知っているかも知れない、ということになる。困った。どうも不安がつきまとう。

 こういう状態で、私はいつも夢から目を覚ます。この夢はもう何年も続いているシリーズものの夢だ。結構浅い眠りの時にこの夢を見るのだ。そう、あの金縛りにかかって、ようやく目を覚まして体が自由になる時のような、あの感覚だ。目を覚ましたばかりの私には、あの家の、あの部屋部屋のことはほとんど本当に思える。実際に存在しているのだ。話しても誰も信じないだろうが、それでいい。そもそも誰にも知られたくないし、気づかれたくない、私だけの秘密だからだ。

 目覚めてしばらくは夢と現実に境目はない。いや実際にあるのだ。私の阿頼耶識の中に。さっき私はシリーズものと言った。私はこの家の中で、たくさんのエピソードを体験してきた。そうあのサザエさん一家が 、あのちんまりとした一軒家でいっぱいのドラマを生み出してきたように、私もこの不思議な茅葺の家でいっぱいドラマを目撃してきた。じつは今夜もさっきまでこの家の中で、大捕物があったのだ。ヤバイ、これが最後だ、というところで目がさめた。

 これまでのストーリーを展開したら、ドストエフスキーの「カラマゾフの兄弟」くらいの長さになるかもしれない。あれより長いかもよ。いつかは私も全部記録するかも知れないが、私の人生もだいぶ先が縮まってきた。時間が許すだろうか。それにそもそも本来誰にも知られたくない秘密なのだ。小説にまでして恥を書くこともなかろう。私一人で楽しんだほうがいいのではなかろうか。それもこれも今後の展開による。必要あり、という兆候があったら、また記すこととする。

<15>につづく

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