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2018/01/25

「鈴木大拙コロンビア大学セミナー講義」<2>

<1>からつづく

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「鈴木大拙コロンビア大学セミナー講義」 上巻
鈴木大拙 (著),‎    重松宗育 (その他),‎    常盤義伸 (その他) 2017/11 出版社: オクターブ  単行本: 246ページ

1)いやいや、精読する、なんて必要ない。ただ、楽しめばいいのだ。この講義録、講義に使われたメモを日本語に訳したものなので、ですます調で書かれている。そもそもが書籍ではないのだ。そこんとこが実にいい。

2)ここまでこなれたものにするプロセスでは、おそらく当事者たちの大変な苦労があったに違いない。それを、一気に「楽しめる」自分はなんて幸せなのだろう。実にわかりやすい講義録だ。

3)そもそもが1950年代初半にアメリカの大学での講義録だ。相手は向学心には燃えているだろうが、知識を学ぼうとする学生たちである。もっともジョン・ケージとかゲーリー・スナイダーとか、いただろうが、それでも若い柔軟で、進取の気性に富んだ聴衆に向けて語られている。すこしは刺激的で、魅力的な単語や人名や、概念がちりばめられている。

4)されど、21世紀の今、年老いた60翁が、老眼鏡をかけて、昼寝かたがた目をしばつかせながら読むには、仔細になどこだわる必要はない。ああ、ふむふむ、でいい。

5)ここで語られているエピソードのほとんどは、すでに他所において、学んだり、聞いたり、察したり、あるいは考えたりしたことである。敢えていうなら目新しいことなどない。むしろあってはならないのだ。これはもう読み込み済み、であってしかるべき内容ばっかりだ。

6)そこんとこが楽しい。おそらくそもそもが1950年代の英語のメモを、現代の日本人の翻訳者たちが邦訳したものである。実に21世紀的に翻訳されていることだろう。ありがたいことである。

7)8歳で修証義の不思議な文言にプロボークされて以来、10代なかばで旅にでて、20そこそでOSHOに出会い、インドに何度か遊び、社会のうごめきにそれなりにもまれ、一通り天変地異も体験し、いまや年老いて、わずかな行動範囲にある、無名な禅寺で月に何度か参禅する程度の我が身ながら、もう、小さな器には、たっぷりと雫が満たされてしまっている。

8)この本から、何事か学ぼうとして精読するほどのことは、この本には必要ない。この講義録の存在が、私にはあることを教えてくれる。ミッシングリンクだ。我が身が生まれる前の、母親のおなかに入る前の記憶が、実はこの本にある。あってしかるべきだ。あったのだ、という感覚を与えてくれる。

9)よかった。

<3>につづく

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